『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』戦争が無くならない世界構造と人間の本質
この週末、何を観よう……。映画ライターのバフィー吉川が推したい1本をピックアップ。おすすめポイントともにご紹介します。今回ご紹介するのは、現在公開されている『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』。気になった方はぜひ劇場へ。 【画像】『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』場面カット【9点】 〇ストーリー 3年前の8月31日。突如巨大な【母艦】が東京へ舞い降り、この世界は終わりを迎えるかにみえた……。その後、絶望は日常に溶け込み、大きな円盤が空に浮かぶ世界は今日も変わらず廻り続ける。友情と初恋とセカイの終わりと… 女子高生2人のディストピア青春日常譚‼ 〇おすすめポイント 小学館「ビッグコミックスピリッツ」で2014年から2022年にかけて連載されていた同名作品を前後編の長編アニメとして映画化。 原作者の浅野いにおが制作段階から積極的に関わっており、浅野の描きたいこと、伝えたいメッセージ性というものが直接的に反映されている作品ともいえるだろう。 音楽はもちろん、バラエティ番組ではすっかりお馴染みではあるが、『鯨の骨』(2023)でみせた演技力も兼ね備えたマルチタレントあのちゃん。映画とドラマで展開される実写版『【推しの子】』にも出演が決定している。そんなあのちゃんと「YOASOBI」のボーカルとして知られる幾田りらのダブル主演ということもあり、キャストのインパクトは抜群の作品だ。幾田りらは、『竜とそばかすの姫』(2021)では声優として参加もしている。 しかし、それ以上に注目すべき点は、今作の漫画的なディフォルメされた絵柄に反して描かれる重圧なテーマである。 突然、現れた巨大母艦。それは地球を征服するというわけでもなく、攻撃するというわけでもなく、そこに浮いているだけ。確実に何かが変わったというのに、何も変わらない、変わっていないと思い込んでいるだけなのかもしれない日常を、社会との繋がってないわけでもないが、孤立しているといえば、そうともいえる感受性豊かな女子高生の視点から描いていく。 ストーリーの構造が独特のものとなっていたり、ファンタジー要素も絡んでくるため、前章だけでは、理解できない点も多く、その点は5月24日に公開される後章への期待を募らせるのだが、社会構造を痛烈に風刺するようなセリフのワードセンスとインパクトは独特のものがあって、ときに哲学的である。 今作のなかに登場する、いわゆる上に立つ人間たちは、正義を理由に暴力を正当化しようとする。 しかしそれは、いかに人間が攻撃的な生き物で、いかに自分たちのことだけしか考えていないかということを思い知らされる行為である。 この世界から戦争というものが無くならない構造そのものを観ているようだ……。 (C)浅野いにお/小学館/DeDeDeDe Committee 〇作品情報 キャスト:幾田りら、あの、種﨑敦美、島袋美由利、大木咲絵子、和氣あず未 白石涼子、入野自由、内山昂輝、坂泰斗、諏訪部順一、津田健次郎ほか アニメーションディレクター:黒川智之 脚本:吉田玲子 アニメーション制作:Production +h. 原作:浅野いにお「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」(小学館「ビッグスピリッツコミックス」刊) 配給:ギャガ 主題歌:前章「絶絶絶絶対聖域(ぜぜぜぜったいせいいき)」 ano feat. 幾田りら|後章:「青春謳歌(せいしゅんおうか)」 幾田りら feat. Ano 公式HP: dededede.jp 前章:3/22(金) 後章:5/24(金)全国ロードショー
バフィー吉川