岐阜の井戸水位低下「掘削中断しボーリング調査」 リニア工事でJR東海社長会見 静岡とは「ケース異なる」【一問一答あり】
リニア中央新幹線のトンネル掘削工事が行われている岐阜県瑞浪市で住民の共同水源などの水位が低下した問題で、JR東海の丹羽俊介社長は16日に名古屋市で開いた定例記者会見で、トンネル掘削工事を中断し、トンネル先端から水平ボーリング調査を実施して前方の地質状況を詳しく調べると明らかにした。 浜岡原発再稼働の行方、地元の意向どう集約?【「グラレコ」で可視化!静岡県知事選争点㊤】 出水区間では湧水量を低減する工法「薬液注入」を実施するほか、応急措置として住民が上水道を利用するための工事に着手し、新しい井戸を数日以内に掘り始めると説明した。 リニアトンネル工事に伴う水資源への影響は静岡県でも議論が続いている。丹羽社長は、瑞浪市ではトンネル工事近くで地下水位が低下したのに対し、水資源への影響が懸念される静岡県の大井川中下流域は「トンネル工事から河川延長で約100キロ離れている」とし、「ケースが異なる」と強調した。 JRは工事前の地質調査結果などから周辺地域での地下水位低下を懸念し、観測用井戸を3カ所に設置していた。丹羽社長は「影響予測には不確実性が伴う。実際に水利用への影響がある場合は、応急措置を実施していく一連の流れだ」と述べ、想定範囲の事態だとの認識を示した。2月中旬ごろからトンネル湧水が発生し、現在も毎秒約20リットルが出続けているという。 13日の静岡県専門部会で山梨県から県境を越えて県内で高速長尺先進ボーリングを実施するJRの計画が認められたことについては「静岡県内の地質、湧水の状況を早期に把握し、流域関係者の安心につなげたい」と述べた。 「応急処置で上下水道工事を実施」 JR東海社長の一問一答 名古屋市で16日に行われた丹羽俊介JR東海社長の定例記者会見での主なやりとりは次の通り。 -岐阜県瑞浪市の共同水源などの水位低下への対応は。 「住民への影響を最小限に抑えるために応急措置として上水道の工事を実施し、新しい井戸を数日以内に掘り始める。水田地帯の地下水位を確認するための観測用井戸も新設する。この先、(瑞浪市)大湫(おおくて)町中心部の盆地の地下を工事するが、地下水への影響を回避、低減するためにトンネル掘削工事を一端止めて、トンネル先端から水平ボーリング調査を数百メートル実施する。工事との因果関係は引き続き専門家に相談しながら調査するが、工事による影響の可能性が高いと考えている」 -想定した事態なのか。 「工事前に地質などの調査に基づき影響予測を行い、環境保全措置を取りまとめている。ただ、予測には不確実性が伴う。そのためにモニタリングをしっかりと行っている。実際に地下水位が低下し、水利用への影響が生じた場合は支障をきたさないように応急措置を実施していく。一連の流れで考えている」 -静岡県との協議への影響は。 「今回はトンネル工事の近くで起こった事象。一方で静岡工区については、トンネル工事箇所から河川延長でいうと約100キロ離れた大井川中下流域に与える影響や対策を議論していて、ケースが異なる。静岡工区では国専門家会議が取りまとめた報告書を踏まえた対策やモニタリングを講じていく」 -県専門部会で県内での高速長尺先進ボーリングが認められたことの受け止めは。 「技術的観点からリスク管理ができていると確認された。20日から山梨県内でボーリングを再開するが、早くに県境を越え、静岡県内の地質、湧水の状況を把握し、その後のトンネル先進坑や本坑の掘削工事を精力的に進めたい。地質、湧水の(調査)結果を公表することが流域関係者の安心につながる」 -新しく誕生する知事とはどのような関係性を築きたいか。 「できるだけ早く伺い、お会いしたい。静岡工区の一日も早い着手に向けて地域の理解、協力が得られるよう双方向のコミュニケーションを大切にする従来の姿勢を直接伝えたい」
静岡新聞社