“新卒3年目のZ世代”を代表に抜擢 サイバーエージェント『SNSクリエイティブスタジオ』流の「バズり方」とは
サイバーエージェントは、2024年1月よりSNS動画の素材開発に特化した『SNSクリエイティブスタジオ』を設立。同スタジオでは、新しい未来のテレビ「ABEMA」の若手クリエイターたちが、ABEMAの番組公式TikTokやInstagramなどで配信される縦型動画の企画から撮影、編集まですべてを担っている。Z世代のクリエイターが多く在籍しているため、ティーンに特化したクリエイティブ開発も同スタジオの強み。なかでも、ABEMAの人気恋愛番組『今日、好きになりました。』(以下、『今日好き』)のオリジナルSNS動画の累計再生回数はわずか3ヶ月で4.1億回を突破するなど飛ぶ鳥を落とす勢いを見せている。 【写真】『SNSクリエイティブスタジオ』代表・平田梨里花、SNS責任者・吉田将太 今回は、同スタジオの代表を務める平田梨里花と、SNS・AI分掌などの責任者・吉田将太に『SNSクリエイティブスタジオ』設立の背景や『今日好き』の動画がバズった要因、今後の目標などについて聞いた。 ・“若者を打席に立たせる”社風のおかげで成長できた ーーまずは、『SNSクリエイティブスタジオ』設立の背景をお聞かせください。 平田梨里花(以下、平田):藤田社長とお話しする機会があったときに、「SNSクリエイティブスタジオを創設させてください」と提案したことで、実際にスタジオができました。 ーーなにかきっかけがあったのでしょうか。 平田:最初は番組のマーケティングとプロモーションとして、番組全体のプロモーションに関する仕事をしていたのですが、SNS特化のチームに移動したとき、縦型動画に可能性を感じ、もっと注力していきたいと思うようになったのがきっかけです。 ーー提案してから実現までのスピードはかなり早かったのですよね? 平田:そうですね。提案してから2ヶ月後くらいには立ち上がりました。 ーー平田さんは、2022年入社で、2024年1月には『SNSクリエイティブスタジオ』の責任者に就任するという。かなりのスピード感です。 平田:おそらく、弊社の社風もあると思います。若者を打席に立たせてチャレンジさせていくというのをかなり大事にしているので。 ーーキャリアが浅いなかで責任者をやることに対するプレッシャーはありましたか? 平田:正直、ありましたね……。ですが、それよりもチャレンジする機会をもらえたからには頑張りたい! という気持ちが強かったです。 ーー吉田さんは、どういった経緯でSNS担当をされることになったのでしょうか。 吉田将太(以下、吉田):実は、大学院までは化学の研究をしていたんです。 ーーまったく違う分野からの抜擢だったのですね。 吉田:学生時代は、ソーシャルとはまったく関係のない世界にいました。でも、入社したばかりのときに与えられたトライアルミッションで、「TikTokで50万回再生されるようなユーザーに届く動画を企画してみなさい」というものがあって。 ーーサイバーエージェントらしいミッションですね……! 吉田:たしかに(笑)。結果的に僕が作った動画が500万回ほど再生されたんです。その後、「1回ソーシャルまわりをやってみたらいいんじゃないか?」と提案されて、X周りを担当することになりました。 ーー具体的には、どのようなお仕事を? 吉田:主にABEMAの公式XをはじめとしたABEMAのSNSを活用したマーケティングですね。最初は、MLB(メジャーリーグベースボール)を主に担当していたんですが、徐々にサッカーやバラエティなど、幅広いジャンルも担当するようになりました。SNS戦略というのは、アルゴリズムの世界なので、“絶対”というものは存在しないのですが、仮説を立てて実行していくというのは自分の性分に合っていたなと思います。 ーー吉田さんも、入社してすぐに結果を残されてきた印象があります。 吉田:平田も言っていたように、若者を打席に立たせるという社風のおかげだと思っています。若いうちはキャリアが浅いこともあり、なんとなく得意……くらいでは注目されなかったりする。でも、弊社の場合はそこを拾い上げてチャンスを与えるケースが多いです。早いうちからFIFA ワールドカップのプロジェクトに関わるなど大きな舞台でチャレンジさせてもらえたことには素直に感謝をしていますね。 ・“既存のスタイルに取られない姿勢”が『今日好き』動画のバズの要因に ーー平田さんは、学生時代から動画編集をするのがお好きだったのですか? 平田:そうですね。高校生のときから、趣味としてスマホで編集をした動画を友人間で共有していました。当時は、いまほどTikTokやを皆が投稿している状況ではなかったので、完全に友達に送るためだけのものでしたね。 ーーまさに、縦型動画のサラブレットという感じですね……! 平田:テレビ番組も好きだったので、自分で企画を作りながら、スマホで縦型動画を編集するというのが組み合わさった、この仕事は天職だと思います。弊社では内定後、入社前にアルバイトができるので、そのときからずっと縦型動画を作っていました。 ーー動画を切り出すのは、どういう部分が美味しい部分なのかを抽出する作業だと思います。みなさんのなかで、共通認識がなされているのでしょうか? 吉田:みんなの共通認識をすり合わせる時間をサボらないというのが、僕らの組織の特徴だと思っています。たとえば、「この番組の投稿は誰がターゲットなんだっけ?」という観点を起点に、ティーンなら平田、野球やサッカーだったら僕……という感じで、意見交換をしています。それぞれ、ターゲットによって刺さるポイントが異なるためですね。 平田:私が担当している領域は10代向けのものが多いので、そうなると「共感性」がポイントになってくるんです。共感ポイントがあると、友達にシェアしたくなる。なので、どの部分を抽出すれば共感が生まれるのか? というのを重要視しています。 ーー担当されている番組とも話し合われることが多いのでしょうか? 平田:番組制作がスタートする前から、制作陣と二人三脚でやっている感じです。「番組の中でこういったシーンを作っていきましょう」と相談もします。。 ーーそんなところから参加されているのですね……! 平田:そうですね。台本を通じて指示をすることはもちろんしませんが、「2ショットを撮るときはこういうアングルの方がSNS的には反応がいいです」といったアドバイスは伝えています。 ーー『今日、好きになりました。』(以下、『今日好き』)なんかは、SNSでの再生回数もすごいことになっていますよね。 平田:『今日好き』に関しては、今年の3月に“今日好き学園”と題した、「もし、『今日好き』のメンバーが同じ学校だったらどんな風になるんだろう?」というのをコンセプトにした企画を提案したんです。すると、実際に投稿した動画に対して、「こういう学校、憧れる!」といった好評なコメントを多くいただき、かつ再生数もついてきました。以前は、番組本編の映像を切り出して投稿することが中心でした。しかし、既存の手法に囚われることなく、新たに企画立案するスタイルに変更したことにより、みなさんに楽しんでいただける動画を提供できるようになりましたね。 ーー切り出しだけでなく、新たな企画を作っていく。夢が広がりますね。 ・ABEMA発で世の中のトレンドを作りたい ーー『SNSクリエイティブスタジオ』のメンバーは何人いらっしゃるのでしょうか。 平田:全員で、7人ですね。 ーーみなさん、趣味趣向はバラバラ? 平田:そうですね。それぞれいろいろなジャンルに興味をもっています。なので、「私の好きな界隈ではこれが流行っているよ」とシェアしていますね。たとえば、恋愛番組を視聴する層には届いていないものでも、K-POPファンの間では流行っているコンテンツもあります。それをメンバー同士でシェアしながら企画を練っていくことで、「これなら相乗効果を狙えるかも!」という発見も多いです。 ーーそれは、意図的にバラされたのですか? 平田:そもそも、何かしらのジャンルにハマっている“オタク気質”の人たちが多く所属している部署なんです。そのため、結果的にそれぞれ違うジャンルに興味があるメンバーが揃った……という感じです。 吉田:組織のことを考えると、趣味趣向がいろいろな分野に分かれているのはいいですよね。ただ、アニメにあまり興味がない子にあえてアニメの担当を担ってもらい、多くの方に見てもらえるような動画の企画をしてみようなど、チャレンジをすることもあります。もっと、所属するメンバーを増やしていきたいと思っているので、縦型動画のプロフェッショナルであるということは当たり前として、それ以外になにか武器を持っている人が集まっている組織にしていきたいと思っています。 ーースタジオを開設する前後で考え方は変わりましたか? 平田:個人的にいいなと思ったものを、メンバーたちにすぐに共有するようになりました。たとえば、特殊な撮影方法を発見してシェアし、後日、皆で「どうやって撮っているんだろう?」と研究することもしばしば。 吉田:組織全体の変化でいうと、『SNSクリエイティブスタジオ』という看板ができたことによって、縦型動画に注力していこうという意識がより高くなったように思います。SNSで掲載した縦型動画の再生回数が伸びたら、連動して『今日好き』本編の再生回数も伸びる、といった結果が出てくるとSNSや縦型動画をマーケティングとプロモーションの場としてもっと活用していこうという、すごく良い作用を、このスタジオが生み出している気がします。 ーー最後に、今後の『SNSクリエイティブスタジオ』での目標を教えてください。 平田:私は、世の中のトレンドをABEMA発で作り、多くのみなさまに届けたいという目標があります。 吉田:僕もいままで誰かがやってきたことではなく、新たなチャレンジを生み出し、ユーザーのみなさまに楽しんでもらいたいです。撮影手法なのか、企画の方向性なのか。もしくは、切り出し動画ひとつでも、こういう編集にしたら盛り上がれるんじゃないかとか。そういう話ができるメンバーが集まっているので、『SNSクリエイティブスタジオ』はいいものを出しているよねと、社会的にも認知されたいと思っています。
リアルサウンド編集部