屈辱にまみれた森保ジャパン。イラクとの実力差はなく、試合にかける執念の差で競り負けた【アジア杯】
決定力不足ではなく、チャンス不足
アイメンがターゲットになったときは、両ウイングのジャシムとユーセフ・アミンが常に飛び出しを狙っていたので、板倉や谷口がついていくなら、ディフェンスラインのカバーが必要になる。 リバプールでは、CBが追撃した背後のカバーをアンカーに入った遠藤航が果たしていたが、そうした明確な対処法が見られなかった。少なくとも1対1で勝てない以上、アイメンに対しては必要だったのだろう。 また、ミドルプレスに並ぶ日本の武器であるサイド攻撃に対しても、イラクは手を打ってきた。日本のサイド攻撃は結局、ポケット(ペナルティエリアの両角)を突き崩し、グラウンダー等のパス性のショートクロスを入れてこそ、破壊力が出る。大外からロングクロスを入れても強みがない。 イラクの守備は[4-4-2]の布陣だったが、自陣に引くときは最前線にアイメンを残し、トップ下のイブラヒム・バイエシュがボランチとともに3枚で中盤に並び、[4-5-1]に変化して真ん中を使われないよう、制限をかけた。大外は捨ててもいいが、中央は起点を作らせない。イラクの守備は明確だった。 一方、後半になると、冨安を投入しつつ前線の配置も変更した日本が、特に左サイドで攻勢をかけ、中盤の背後を取れるようになった。後半の中ごろまでは、かなりゴールの匂いが強まっていた。 ところが、イラクは66分に中盤のユーセフに代え、DFアリ・アドナンを投入。5バックへ。攻略された中盤を諦め、最終ラインを5枚にした。すると、サイドを突破されてもイラクはCBのカバーが利きやすくなり、再び日本の攻撃は勢いが衰えてしまった。 どうにか後半アディショナルタイム、コーナーキックから遠藤が1点を返したが、日本の反撃はここまで。イラクは逃げ切り際の修正も的確だった。また、あれだけ球際で執念を見せられると、たとえ崩してもゴールを割るのは簡単ではない。 決定力不足ではなく、チャンス不足。全体を平均すると内容は五分だが、前半アディショナルタイムに足を引きずりながら頭で叩き込まれたアイメンの2ゴール目が重かった。 この試合にかける執念の差で、競り負けた。そして、それを無効化するほどの実力差はなく、日本は敗れた。連勝が止まり、屈辱にまみれた森保ジャパンは次にどんな試合を見せるか。 取材・文●清水英斗(サッカーライター)