『マインクラフト』の映画化は成功するのか? カギを握るストーリー性とキャラクター性
ワーナー・ブラザーズは9月4日、『Minecraft』を実写化した映画『マインクラフト/ザ・ムービー』のメインビジュアルと予告動画を公開した。 【画像】ヒットの可能性は? “映画マイクラ”予告動画の注目シーン 存在が明らかとなったときから、原作のファンを中心に大きな期待を寄せられてきた同作は、下馬評どおりの成功を掴むことができるのだろうか。プレスリリースやトレーラーの内容から、その可能性を考えていく。 ■全世界で3億本超を販売した『Minecraft』が映画化 『Minecraft』は、スウェーデンのインディーディベロッパー・Mojang Studiosが開発/発売を手掛けたサンドボックスゲームだ。サンドボックスとは、与えられたフィールドのなかでプレイヤーが自由にタスクを探し出しながら遊ぶジャンルのこと。同タイトルでは、8bitで表現された味のある3Dグラフィックの世界で、エリアの開拓や本拠地の建築、武器/アイテムの製作、ボスの打倒といったさまざまな目的へと没頭することができる。まるで「砂場(sandboxの日本語訳)」で遊んでいるかのような童心をくすぐるゲーム体験が、『Minecraft』の最大の魅力だ。 2014年には「世界で最も売れたインディーゲーム」として、ギネス世界記録にも認定された。全世界における累計販売数は3億本超え(2023年10月時点)。この数字は、あらゆるゲームソフトのなかで最大のものである。 『Minecraft』の映画化をめぐっては2014年、Mojang Studiosの創業者であり、同タイトルの開発において中心的な役割を担ったゲームクリエイター兼プログラマーのMarkus Alexej Persson氏がワーナー・ブラザーズと協議中であることを明かしていた。当初は3年ほどの制作期間を経て、2017年以降に公開される予定だったが、監督/脚本家とMojang Studiosのビジョンが一致せず、計画が頓挫。その後はなんとか公開日が決定するも、新たに監督/脚本を務める予定だったロブ・マケルヘニー氏の降板やコロナ禍の影響を受け、2度にわたって延期してきた経緯がある。 ワーナー・ブラザーズによると、『マインクラフト/ザ・ムービー』は2025年公開予定とのこと。監督に『ナチョ・リブレ 覆面の神様』などで知られるジャレッド・ヘス氏、主演に「アクアマン」シリーズ、『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』などで知られるジェイソン・モモアなどがクレジットされている。 ■成功したゲーム原作の映像作品との相違点 ヒットのカギは、ストーリーの出来次第? ゲームカルチャーの歴史を振り返ると、これまでも数々の人気タイトル、人気キャラクターたちが映画やドラマ、アニメといった映像作品としてメディアミックスされてきた。近年では、『名探偵ピカチュウ』(2019年)や『ソニック・ザ・ムービー』(2020年)、『ソニック・ザ・ムービー/ソニック VS ナックルズ』(2022年)、『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』(2023年)などのヒットが記憶に新しい。さらに時をさかのぼると、「モータルコンバット」や「トゥームレイダー」「バイオハザード」「サイレントヒル」「ウォークラフト」といったシリーズの映画化が一定の成功を収めている。直近では、「Fallout」シリーズのドラマ化も話題を呼んだ。 これらの映像作品は原作となったゲームにストーリー性やキャラクター性が盛り込まれているため、内容を想像しやすいというメリットがあった。ここからくる期待感も、消費者が映画館へと足を運ぶ理由になったはずだ。言わずもがなだが、原作はすべて、ゲームとして大きな成功を獲得してきたシリーズである。同様の文脈でストーリーが描かれていたからこそ、映画も高評価を得られた面がある。 先にも述べたとおり、『Minecraft』は世界最大のヒットを記録しているゲームタイトルだ。今回の映画化が注目を集める理由には、同タイトルの輝かしい実績とファンからの支持が強く影響しているに違いない。その一方で、先に列挙した数々の成功作例とのあいだには、「原作に明確なストーリー性やキャラクター性がない」という大きな違いもある。この点が『マインクラフト/ザ・ムービー』の最大の懸念事項であり、(新たに作品性を築き上げなければならないという意味で、監督/脚本家との折り合いがつかず)制作が難航してきた理由でもある。 配給元であるワーナー・ブラザーズがプレスリリースのなかで明かしているあらすじによると、『マインクラフト/ザ・ムービー』には、謎のポータルにアクセスしたことがきっかけで『Minecraft』の世界に迷い込んでしまった、何者かわからない4人の登場人物の姿が描かれるのだという。彼らは同タイトルさながらのブロックで作られた大自然のなかで、あるときは道具の製作に、またあるときはブタの大群の撃退に身を投じながら、その世界に迷い込んでしまった理由を追い求めていくようだ。 今回、公開となった1分18秒のトレーラーには、「ピンクの羊」や「水色のシャツを身にまとった男・スティーブ」といった『Minecraft』ならではのキャラクターも登場した。これらから予想するに、『マインクラフト/ザ・ムービー』は、原作の設定を忠実に反映したメディアミックスで、ゲームに没頭した経験がある人ならば、クスッと笑ってしまうような要素にあふれた作品となるのではないか。 しかしながら、描かれる物語の詳細はいまだ、秘密のヴェールに覆われたままだ。そのベクトルはともかくとして、映画作品として大衆に訴えかけられるようなストーリーがなければ、先行して鑑賞した人たちの悪評を買うケースもあるのかもしれない。そのような声がひとり歩きするようなことがあれば、良い前評判をくつがえし、“大コケ”してしまう未来が訪れる可能性もあるだろう。 はたして『マインクラフト/ザ・ムービー』は、映画ファン、原作ファンの大きな期待に応えることができるだろうか。続報に注目したい。
結木千尋