強迫症で「浴室から6時間出られず」 小学生で発症した経験胸に 悩む子へ「人に頼って」 #令和の子
―その後は? 「映像が好きで、大阪芸術大学短期大学部に進みましたが、コロナ禍で家にいる時間が長くなったこともあり、お風呂は6時間に。心の中では『助けて』と何百回と言ってたけど、誰にも言えませんでした」 「高校時代からずっと、スマートフォンのメモに、自分の気持ちを書いていました。『誰かに話を聞いてもらいたい』『一人では抱えきれない』…。でも、言えなかった。当時は、病院に行ったら普通じゃなくなると思っていました。夜、1人で泣いていました。6時間かけてお風呂に入って、ようやく家から出ようとしても、ボロボロの手を見て泣けてきたこともあります」 「大学2年の時、卒業制作があるのに、お風呂や手洗いに時間がかかり、欠席や遅刻を繰り返していました。このままずっとこうして生きていくのかなと思った時、もう言おうと決めて、大学の相談室の人に話しました。『今までよく頑張ってきたね』という言葉に救われました。私は、勉強を頑張るとかはできてなかったけど、病気の面では頑張ってきたんです。でも、それは誰にも知ってもらえてなかった。何も頑張ってない人間みたいに思われているのかなと感じていたので、ようやく頑張っていたことを認めてもらえたと思いました」
―家族は? 「かつては手洗いを『いいかげんにしろ』と言われ、『(強迫症を)治せるから大丈夫』と答えた記憶があります。高校時代は、その話題になると、私は『言わないで』と怒ってしまっていて…。家族にとっては変だと思いながらも、触れられない話題になっていたと思います。2022年に病院に行くことになり、初めて面と向かって話しました。私はこういうことが怖くて、こういう行動をしていたんだと。それでやっと苦しい空気から解放された感じになりました」 ―治療は? 「投薬と行動療法に取り組みました。当初は週1回通院し、医師から宿題が出ました。例えば、肘まで洗ってたのを手首までにしてみるとか。お風呂で3回洗うのを2回にするとか。そして、時間の経過とともに、どれぐらい不安があるかをパーセンテージで記録します。少しずつ変化があり、気にならないようになっていきました。1年半たった今は、お風呂は40分になりました」 ―高校時代の実体験を元にした自主制作映画「悠優(ゆうゆう)の君へ」を作りましたね。映画には、ひたすら手を洗い続ける女子生徒が登場します。 「短大を卒業し、通院していた2022年夏ごろ、俳優を目指している友人から、シナリオコンクールがあると教えてもらいました。今しか書けない気持ちがあるんじゃない?と。大学時代の先生にアドバイスをもらいながら、脚本にしました。映画を自主制作することになり、大学の同級生や高校の友だちが参加してくれ、完成しました。高校生だった当時に言えなかった思いを言葉にできて、自分の気持ちが整理できた感じがしました。試写会を開き、今は一般公開を目指しています」 ―ユーチューブ「ののはらちゃんねる」でも強迫症のことを発信していますね。 「この病気のことをもっと知ってもらいたいです。自分と同じように苦しんでいる人は多分います。『1人でどうにかしようとするんじゃなく、人に頼って』と伝えたい。誰にも相談できないのが、よけいに不安を強くさせるのだと思います。私は、病気のことを隠さなくなってから、『自分を生きれている』感じがしています」