松本幸四郎 かなわなかった叔父・中村吉右衛門との稽古 三回忌で思い語る
■舞台に立ち始めて44年 好きな歌舞伎の魅力を伝えたい
――2020年にはオンラインで歌舞伎を上演する『図夢歌舞伎』に挑戦されましたが、コロナ禍を経て、改めて歌舞伎の在り方についてどのように考えていますか? 「今もう本当に模索している真っ最中だと思います。 “歌舞伎にでも行ってみようか”と思っていただける時に、必ずどこかで歌舞伎が上演していないといけないと思っていますので、生でお見せすることの魅力を改めて考えないといけないと思います。とにかく歌舞伎の魅力というか…好きなんですよね。演じることも、先人たちが作ってきた歴史も好きです。それを一人でも多くの人と共有したいという思いです。どうやって一人でも多くの人に見ていただくか、様々な興行形態含めて、演目もあらゆる可能性の行動をしていくことではないかと思いますね」
■息子・市川染五郎への思い 「飛び込んでどんどんやってもらいたい」
――『一本刀土俵入』では息子・染五郎さんと共演。染五郎さんはどのような人ですか? 「たくさん考えて、何か行動を起こしたいという思いはすごくあるなと感じるので、“自分にできるかな”と考えるよりも、実際に飛び込んで行くことをどんどんやってもらいたいって思います。そういうマグマというか…すごく熱いようには見えています」 ――染五郎さんにお芝居の指導をすることがあると伺いました。心がけていることはありますか? 「もちろん理屈や、舞台背景、そういうものは必要なことだと思います。ただ表現者なので、それを“どう表現するかということに気をつけて”と言いますかね。もちろんセリフの言い方や、形がどういう形なのかという技術は身につけなきゃいけないですけど、基本的に一人芝居以外、会話劇ですから。どうやって会話するか、どうやって伝えるか、それをどうやって聞いているかという話をしています」 ――染五郎さんをはじめとする若手の歌舞伎俳優たちの姿はどのように映っていますか? 「すごく力がついてきていると思いますけど、一つ一つがもっと太くなっていってくれるといいなって思いますね。それにはもっと正統な古典をしっかりやるということもそうですし、新作であればもっとはじけるっていうこともできると思うので。(若手の歌舞伎俳優は)特に20代・30歳前後の年代が多いんですけど、その年代は比較的、コミュニケーションの多い年代。そこで一つ固まりになって何かを生み出してもらいたいなと思います」 ――今後、幸四郎さんが挑戦していきたいことは? 「こういうのをやりたいな、ああいうのがあったら面白い、これもできたら面白いなっていうのがちょっとたまりすぎて…“新しいことを探そう”ということは10年ほど前にやめたんです。なので、それを実現していきたいと思いますね。“面白いこと、変なことを考えるね”って言われ続けてきているので、それが“本気だったんだ”ってことをやっていきたいです」