<攻める・22センバツ倉敷工>新しい時代への挑戦/下 失敗恐れず過程重視 昨夏の敗戦、契機に方針転換 /岡山
昨秋の県大会以降、選手たちが繰り返し口にする「攻めて攻めて攻めたぎる野球」。創部80年を超える長い歴史を見ても「攻撃型」のチームである倉敷工がなぜ今、改めて「攻める」を強調するのか。きっかけは、昨夏の苦い経験だった。 2021年7月18日、倉敷市のマスカットスタジアム。シード校として岡山大会に臨んだ倉敷工は3回戦で岡山城東と対戦し、3―4で敗れた。昨春の県大会でコールド勝ちした相手だっただけに、衝撃は大きかった。「おごりがあったのかもしれない。あんな負けはもうしたくない」と福島貫太主将は振り返る。 選手と同様、「完全に気持ちが受けになっていた。攻めていない」と感じた高田康隆監督。試合を振り返り、「勝たなければいけない」と結果に執着するのではなく、過程にこだわるべきではないかと考えた。新チーム結成直後、高田監督は集まった選手らを前に「攻めて攻めて攻めたぎる野球」という言葉を提示し、問いかけた。「結果は後からついてくる。やりきったと言える試合をするべきではないか」 「攻め」への転換は高田監督にとって挑戦だった。投手出身の監督が就任以降、目指してきたのは最少失点で抑えて試合の流れを作る「負けない野球」。練習も守備に費やす時間の方が多く、守備6割、打撃4割の配分だった。「自分なりに変革したい」という思いもあり、打撃中心に変更。現在は練習時間の9割を打撃に費やすようになった。 結果よりも過程を重視するようになったことで、選手たちは三振を恐れない勢いのあるスイングに変わった。2ストライクと追い込まれると、打ち方を変えたりファウルで粘ったりするなど、「攻め」の姿勢が随所に見えるようになった。昨秋の大会でも予選から「攻める野球」を存分に発揮。県大会初戦では強豪のおかやま山陽にコールド勝ちするなど快進撃を続け、22年ぶりの優勝を手にした。 開幕まであと1週間。初戦で対戦する和歌山東は小刻みな継投が特徴で、直球が魅力の投手がそろう。福島主将は「どんな投手が来ようと、自分たちのプレースタイルは変わらない」と強調する。「いい投手であればあるほど僕たちは燃えて、『打ち崩してやろう』と考える。相手が誰であろうと、やってきたことを出すまでだ」とぶれない。攻めの野球で甲子園にその名をとどろかせる日は目前に迫っている。【岩本一希】