協力した田村さん、篠目駅のにぎわい復活願う、ドラマ「砂の器」ロケから20年【山口】
作家、松本清張の小説「砂の器」がドラマ化され、山口市阿東のJR山口線篠目駅での撮影から20年がたった。同駅近くに住む田村幸枝さん(72)は、主演の中居正広さんや渡辺謙さんのロケを手助けした。当時の思い出を胸に、利用者が減っている同駅の活性化に地域住民と共に奮闘している。 原作は、殺人を犯した天才音楽家と事件を追う刑事の動静を描いた推理小説。同駅は作品の鍵となる亀嵩(かめだけ)駅として登場。SL(蒸気機関車)の運行と給水塔の存在が時代背景の再現にふさわしいとロケ地に選ばれた。音楽家役の中居さんと刑事役の渡辺さんが相対する場面の他、ドラマの重要な局面で何度も登場した。 撮影は2004年の2~3月に実施。制作スタッフが訪れ、亡き夫、清さんに撮影協力を依頼。清さんは島根県での撮影にも同行した。 幸枝さんは出演者の食事を準備。控室として使われた同駅近くの自治会集会所にも出入りができた。中居さんの熱烈なファンに押し切られ、かっぽう着を貸して入室させたことを振り返る。渡辺さんの後ろを歩く通行人役として出演もした。 田村さん宅には出演者のサイン、ロケ終了後に撮影した記念写真、台本が大切にファイルされている。「渡辺さんは背の大きな人だった。アカデミー賞にノミネートされた頃で、どうしても電話を貸してほしいと尋ねてきた」と回想。サインを求めると「一人にあげるとみんなに求められて大変だから、後でこっそり送ってあげる」と伝えられ、そのサインは今も玄関に飾っている。 撮影時はどこからか聞きつけたファンら300人超が同駅に詰め掛けた。放映後にはさらに多くの人が訪れ「あの頃はすごい数の人だった。あんなに篠目駅を訪れる人が多かったことはない」と記憶を巡らす。昨年11月にも「砂の器」のロケ地と知って訪れた韓国人がいたという。 同駅は山口線の中でも利用者が少ないが、列車の撮影を楽しみに足しげく通う〝撮り鉄〟ファンがいる。幸枝さんは寒そうだからと豚汁や焼肉を振る舞うなどもてなすことがある。同駅がある篠生地域の活性化を図る団体「ライフ長門峡」にも属し、花壇整備やイベント開催に協力している。 SLやまぐち号の運行再開が見込まれる5月には「砂の器」のロケ地だったことを周知したいという。「若い人にあの時の盛り上がりを何らかの形で伝え、篠目駅と山口線の魅力発信につながれば」と話した。