大自然の脅威に挑む男たちが熱い中国時代劇!硬派な本格大河ドラマ『康熙帝~大河を統べる王~』
時にコミカルながらも水面下での攻防に緊迫する絶妙なキャスト
『王女未央-BIOU-』のルオ・ジン演じる康熙帝は、治水事業の他にも難題を抱えながら、着実に名君へと成長していく。そんなルオ・ジンと『鶴唳華亭~Legend of Love~』で父子役だったホァン・チーチョン演じる靳輔は、陳潢の才能を活かすべく教え導き、自分のことよりも治水の成功を優先。元バレエダンサーで映画『少年の君』などに出演していた新鋭イン・ファンは、「河神の転生者」と自称し、皇帝を前にしても自分の主張を曲げない治水の天才児・陳潢を精悍に演じる。 そんな3者の絆に亀裂を生じさせるのが宮廷の権力争い。康熙帝の重臣として史書にも名の残る索額図と納蘭明珠は、康熙帝の腹心として鎬を削るライバル。リャン・グァンホアとゴン・レイというベテラン俳優2人による、康熙帝を前にしてのかけあいは一見コミカル。しかし、権力強化のために索額図が靳輔たちを排除しようとすれば、納蘭明珠は援助する。治水事業を進めるには皇帝以外からの支持も必要なため、靳輔と陳潢は図らずも宮中の政争に巻き込まれていく。 また、陳潢と義兄弟の契りを交わしたルー・スーユー演じる高子奇と、ジャオ・チー演じる徐乾学の関係の変化にも注目。3人一緒に科挙を受けながら、唯一受かった徐乾学は索額図に操られ、才能を期待されながら落第した高子奇は、上手に立ち回って康熙帝の側近に収まる。同じく科挙に落第しながら、変わらず治水のことしか考えない陳潢と、組織に取り込まれてしまった2人とのすれ違いがもどかしくやるせない。
どうなる黄河の治水と康熙帝の中国統一。BOX3まで待てない気になる今後の展開
本作の魅力のひとつが、登場人物たちの複雑な人物像。工事費を横領するような汚職官吏であっても、家庭では良き夫・良き父親で、自分の既得権益や地位を守るために靳輔と陳潢に敵対する。立場や環境の違いで善にも悪にもなり得るという、人間の持つ弱さや葛藤もしっかり描いているのがポイント。中でも靳輔のライバルとなる于振甲は、母親思いで汚職や腐敗を嫌う真面目な官吏だ。ただ、都に護送される靳輔の清廉さを認めながらも、職務には絶対忠実という頑固なところがある。民を想う気持ち、治水にかける情熱は同じながら、治水の方法を巡って靳輔と陳潢と対立していってしまう。やがて、于振甲の頑なさが、靳輔と陳潢の進む道に大きな影を落とし、康熙帝の判断をも鈍らせる。 もちろん康熙帝自身にもこうした二面性はあり、名君ではあっても聖人君子ではない。心では同情していても、統治のためには非情な命令も下さなければならない、清濁併せ持つのが皇帝という存在なのだろう。朝廷内の権力争い、于振甲と靳輔の対立、陳潢と徐乾学、高子奇ら3人の運命、そして黄河の治水事業はどうなるのか? すべての問題が決着するであろうDVD-BOX3が待ち遠しくなる。 文=菊池昌彦 制作=キネマ旬報社
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