《池上彰解説》「憲法」は誰が守るもの?…意外と知らない「法律」との“違い”とは
憲法に国民の権利ばかりが書かれているのはなぜか?
憲法は「法律の親分」だと述べましたが、じつは憲法と法律には大きな違いがあります。 それは、法律は国民が守るべきものであるのに対し、憲法は国会議員や官僚、裁判官、公務員といった権力側の人たちが守るべきものだという違いです。 憲法には国民の権利ばかり書かれていて義務について書かれていないといわれますが、これは当然です。国民の権利を権力者がきちんと守るために定められているのが憲法だからです。 このような憲法の考え方のベースにあるのは、17世紀に登場したイギリスの思想家ジョン・ロックの社会契約説です。 人間はもともと自由で平等、平和であり、そうした生まれもった自然権を確かなものとするために、人々はその権利の一部を代表者である政府に委託する。そして政府が権力を乱用することがあれば、人々は政府を変える権利をもつ、というのが社会契約説です。 そのジョン・ロックが活躍した時代、イギリス国民は国王ジェームズ2世の身勝手によって苦しめられることが多く、これに怒った議会は国王を追放し、「権利の章典」を制定しました。こうした経緯を経て、近代ヨーロッパの憲法はできあがっています。 このように国家権力を制限する憲法によって政治をおこなうことを立憲主義といいます。日本の憲法もまた、立憲主義に基づいています。
弁護士JP編集部