なぜ芸人がクレープ屋さんでバイト? 接客で入る「スイッチ」が生きるコント 青色1号・榎本淳さん
シーンにあわせて変わる「接客」
研究熱心な榎本さんは、プライベートでもクレープ作りを自分なりに研究しているそう。 「もちろん、お店のレシピをきちんと守った上でですが、クレープがおいしく見えるように、巻き方や盛り付けに気を配っています。外出先で他のクレープ屋を発見したら、作り方を見たり、実際に食べてみたりすることもあります」 そうして完成したクレープは、「おいしかったです」「また来ます」といった嬉しい言葉となって返ってくるのだそう。 また、大型スーパーが入る商業施設の入口という立地柄、家族連れのお客さんが多いため、子どもたちとのコミュニケーションも生まれます。 業種は違うけれど、ディズニーと学童クラブでの経験が活きているといいます。 「ディズニーのバイトでは、受け持つエリアの住人になりきって言葉遣いも変えてコミュニケーションを取るので、お客さんの前に行く時にスイッチみたいなのが入るんです」 「でも、ディズニーリゾートにはディズニーファンが集まりますが、クレープ屋には小さい子からお年寄りまで幅広くいろんなお客さんが来ます。来店されたお客さんたちに気持ちよく過ごしてもらおうと、ディズニーとは少し違うスイッチが入っているかもしれません」
目指すは賞レースでの優勝
バイト中は、その場に適したスタッフになりきろうと自然とスイッチが入るという榎本さん。 何かになりきることはコントにも通じていて、お笑いトリオ「青色1号」の音響や小道具を使わずに、演技とストーリーで笑わせるという魅力にもリンクします。 「トリオなので、足し算・掛け算の仕方はいろいろありますし、3人のうちの誰にフォーカスを当てるのかで、様々なネタが作れます」と榎本さん。 「ただ、トリオならではの難しさもあります。例えば、2対1の構図になりやすかったり、自由度が高い分コントロールも難しかったりします。そのトリオにしかないスパイスをどうやってうまく追加するのかが、ポイントのひとつかなと思います」 一昨年は「キングオブコント」で準決勝、大阪の若手の登竜門「ABCお笑いグランプリ」(ABCテレビ)で決勝まで進んだ青色1号が今、目標にしているのは賞レースでの優勝です。 「どっちもめちゃくちゃ嬉しかったんですが、ABCの方は東京予選ではウケたけど、大阪での決勝ですごいすべっちゃって……。ABCは出場条件が芸歴10年目まで。僕たちは今年ラストイヤーなんで、今度こそ決勝で関西の人たちにウケたいというのがあります」と意気込みます。 また、「青色1号は、いい感じに準決勝・決勝に進んでも、最後に逃すというジンクスがあるんで、それを払しょくしたい」という裏テーマもあるのだそう。 賞レースにこだわる理由は、ネタを大切にする芸人でいたいから。また、芸人として売れるために必要なピースだからだと話します。 「テレビもライブも、それ以外の仕事でも選ばれるのは、やっぱりチャンピオンだと思うんですよね。だから、賞レースの決勝に残るために、今は月に20本前後のライブに出ています」 ネタ番組への思いも強く、「ENGEIグランドスラム」のようなネタの特番も憧れだといいます。 「そして、テレビを見たバイト先の人たちに『あの芸人さん、実はうちのスタッフだったんだよ』と自慢してもらえるような、そんな恩返しができたら嬉しいです」