「ブラジルのデーモン閣下」タトゥーアーティスト・ジアボン=悪魔に肉体改造して心は天使になった男「オマエヲ ロウニンギョウニ!」銀行や空港の金属探知機が鬼門
かつて人間の姿をしていた頃を思い返せば、父が危篤状態であると知らされても心が動くことはなく、会いに行かなかった。薬物依存も人間時代の話だ。 悪魔の姿となった今では、むしろ妻と子供との時間を何よりも大切にし、自宅で両後ろ足に障害を持つ犬の保護も行っている。毎朝4時に起きてお祈りや犬の世話、運動を行い、少肉多菜の健康的な食生活を送っている。「私がいま考えていることは、子供たちに何を遺してあげられるかということです」とも。 2023年に登記所で改名手続きを行い、「ミシェル」から「ジアボン」に本名を変更した。 悪魔となったことに後悔は無いが、生活する上で発生する細かな支障には手を焼く。例えば銀行の入り口にある金属探知機でも、必ず反応するので係員が来るのを待たないと入れない。中でも国内外のイベントに参加するために利用する空港は鬼門で、身体に埋め込んだ金属製装飾具のせいで金属探知機が必ず反応し、顔認証もできないため、係員に個別対応してもらっているという。 取材日の翌週にはボリビアのタトゥーイベントに参加する予定だと言い、「80~90年代にブラジルで流行したタトゥーデザインの多くは日本文化がモチーフになっていて、機会があればいつか日本に行ってみたい」と日本とのタトゥー文化交流にも意欲を示す。 日本文化に対する親しみも強く、映画『ラストサムライ』を10度は観たという。「日本食は大好き。毎朝寿司を食べてもいいぐらい。ただし、わさびだけは苦手だ」とおちゃめな一面も。 ジアボンと話していて感じるのは、その風貌からは想像できない精神的な落ち着きと教養の高さだ。「私はイエスを信じています。闇の邪悪な存在を偶像化し、それに傾倒したことは一度もありません」と聖書を片手に語る。悪魔崇拝をしていると誤解されるが「聖書のどこを読んでも、私の様な姿の悪魔は出てきませんよ」と凶相に不似合いな落ち着いた笑みを浮かべた。 天使の名を親からもらうが、麻薬中毒になるなどその期待に沿えず苦しみ、逆に自らを悪魔に改造する中で、心は天使になろうとする悪役哲学者に思えて来た。 インタビュー終了間際、日本のネット読者の主な反応を伝えることに。日本を代表する悪魔、デーモン閣下との共演を望む声が多くあったことを伝えると、知っているらしく興味を示した。同氏の決めセリフを教えると、たどたどしく「オマエヲ ロウニンギョウニ シテヤロウカ!(お前を蝋人形にしてやろうか)」と思いのほか気に入った様子。「次はもっと流暢に決め台詞を言えるように家で練習しておくよ」と朗らかに約束し、怖いがどこかホッとする笑顔を浮かべた。 インタビューの様子をまとめた動画を本紙YouTubeチャンネルで公開中。