意外と深刻…日本から「イノベーション」が全然起こらなくなる「シンプルな事情」
イノベーションがまったく起こらなくなる
若者を分散させる弊害はマンネリズムの支配にとどまらない。もっと深刻なのは、イノベーションを起こす力が弱っていくことである。 イノベーションというのは、往々にして何度も失敗が許される若者の無鉄砲さから生まれてくる。度重なる挑戦と失敗の上に築かれるものだが、機会が乏しくなったのでは若者の心に火が付かない。 こうしたチャレンジマインドを引き出すには若者同士で楽しみながら競い合う環境が不可欠なのである。イノベーションの衰退は製品の開発への影響にとどまらない。エンタメやファッションといった文化の創造やブーム・流行を巻き起こし、発信する力の弱体化にもつながっていく。日本で成長分野がなかなか誕生しないことと少子高齢化とは無関係ではない。若者を分散させることは、日本の自殺行為に他ならない。 出生数が多かった時代はどの分野も人材の裾野が広かった。切磋琢磨できる環境がいくらでもあったので、放っておいてもライバルができた。しかしながら、今後はそうした競争環境を中高年が意図して用意していかなければならない。 若者の絶対数が減ることは如何ともとしがたいので、代替策として行うべきは他流試合だ。いくつもの企業が連携して、若い従業員が参加するビジネス交流会や研修会を開催するのもよいだろう。テレワークやフリーアドレス制を採用する企業も増えてきている。曜日を決めて複数の会社の若手が同じビルで働くという試みでもよい。副業として若い世代が経営するスタートアップ事業を手伝うのも選択肢となろう。 どういう形であれ、若い世代が交流する機会を増やすことである。若い世代同士が交流する中から新たな発想が生まれ、ビジネスチャンスを広げていくのである。
河合 雅司(作家・ジャーナリスト)