大手2社から相次ぎ「つけっぱなし向けイヤホン」が登場する理由
Vol.136-1 本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマは最近増加中の“耳をふさがないイヤホン”。ノイキャン性能を誇る高級機が人気となっているなかで、ヒットしている理由は何か。 今月の注目アイテム HUAWEI FreeClip 実売価格2万7800円
ノイキャンもないが着け心地の良さでヒット
最近、耳をふさがないタイプのイヤホンが増えている。今年に入り、大手から2つの製品が同時に登場した。HUAWEIの「FreeClip」と、BOSEの「Bose Ultra Open Earbuds」だ。 どちらも、それぞれのメーカーの特徴を反映したデザインにはなっているが、機能や特性はかなり似ている。 どちらもいわゆる完全ワイヤレス型イヤホンなのだが、耳の穴に入れるのではなく、耳の縁に挟むようにして使う。耳の穴に押しつける形ではなくなり、耳への負担感が大幅に小さくなる。耳への負担を最小限にし、周囲の音も聞こえるようにすることで、長い時間つけっぱなしで使うことを目指したイヤホン……と考えれば良いだろうか。 その性質上、音楽などの再生音は、周囲の音と自然に混ざって聞こえる。ノイズキャンセルももちろんできない。自分が聞いている音も、100%周囲に漏れないわけではない。だが、極端に大きな音にしなければ聞こえないように設計されており、日常的な利用には十分だろう。 こうした製品が注目されるのはいまに始まったことではない。コロナ禍でビデオ会議が注目された頃にも、骨伝導タイプのヘッドホンが売れた。ソニーが2022年に発売した「LinkBuds」も、耳への負担の小ささに加え、周囲の音がそのまま聞こえることがウリだった。長時間耳につける&耳の穴に入れるのは、やはり音楽向けの行為であり、長時間使い続けるのは辛い……ということなのだろう。 耳の側面に挟む、というスタイルにしてもこれが初めてではなく、国内でも「ambie」などが同じスタイルをずいぶん前から販売している。それだけ、こういうスタイルには価値があるということなのだろう。今後も同様の製品はもっと出てくるはずだ。