第2次トランプ政権が一筋縄ではいかないこれだけの理由、新閣僚候補6人の「厄介な人物像」とは?
■ 1カ月前倒し人事でいきなり飛び出した「爆弾宣言」 来年(2025年)1月20日に米国で発足する第2次トランプ政権の動きは、2016年の第1次と比べてとても早い。前回より1カ月は前倒ししたスケジュール感で次々と閣僚レベルの人事を固めてしまった。 【写真】厄介な言動で問題視される人も…内定している第2次トランプ政権の顔ぶれ まず、トランプ政権の組閣を見る際にとても重大なことが11月初めに起きたことを押さえておきたい。 トランプ氏は11月5日の米大統領選挙の投票日から2日後の7日にロシアのプーチン大統領と電話会談していたとワシントンポスト紙にすっぱ抜かれた。この電話についてロシア大統領府報道官のドミトリー・ペスコフ氏は、「電話はなかった。でたらめだ」と完全否定しているが、トランプ政権側は結局否定も肯定もしなかった。事実を述べているのはアメリカ側だと考えられる。 と言うのも、この電話がトランプ陣営の人事に絡んでいるのでは? と思わせる動きがあったからだ。11月9日、トランプ次期大統領は突然自分のトゥルース・ソーシャルで、新政権に第1期目で活躍したニッキー・ヘイリー元国連大使と前政権で国務長官やCIA(米中央情報局)長官を務めたマイク・ポンペオ氏を起用しないと表明したのだ。 これは厄介な事態だと筆者は考えた。この2人を起用されて困る外国の首脳で、トランプ氏に直訴した可能性がある人間と言えば、ロシアのプーチン氏ぐらいしか思い浮かばないからだ。このSNSでの見解公表からバタバタと閣僚の指名が始まった点も考え合わせると、ヘイリー氏とポンペオ氏という2人をプーチンが嫌ったので外さざるを得なかったという見方が出てくる。 もっともトランプ氏自身が「以前の彼らとの仕事を非常に楽しんで、感謝もしている」と言い訳のように付け足して書いた他の理由も見つからない。
■ 第2次トランプ政権はワシントンの「アウトサイダー」になる? 筆者はとても厄介な第2次トランプ政権のポイントを次のように考えている。 まず、トランプ氏はワシントンの「アウトサイダー」として政権を治める覚悟を決めたと言えることだ。 2016年の第1次政権スタート時にはアメリカ政治、あるいはワシントンに詳しい自分のアドバイザーや自分を支える人間を閣僚に指名した。ジャレッド・クシュナー夫妻(妻は娘のイヴァンカ)のような身内とスティーブ・バノン氏やマイケル・フリン氏などトランプを利用して政権のイデオロギーに影響を与えたい人間を首席戦略官や国家安全保障担当補佐官にしたが、彼らは第2次政権では完全に表舞台から姿を消すことになった。 トランプ政権の奥の院には存在していても、日々、トランプ政権を動かすことはしないという立場に祭り上げられたのである。 これは、トランプ氏が第2次政権をワシントンのアウトサイダーとしてコントロールすると決めたことを示していると考えられる。政権そのものが、ワシントンの泥沼(スワンプ)に巣食う官僚という名の生物を駆逐すると言っているので、アウトサイダーにならざるを得ないのだろう。 これには首席補佐官になったスージー・ワイルズ氏の思惑も関係しているかもしれない。 と言うのも、ワイルズ氏は大学を出て27歳で得た共和党での初仕事として、レーガンをホワイトハウスで支える一人として働いた経験を持つ。ワシントンのアウトサイダーとして大統領を務めたレーガン氏は、いまや「冷戦の終結」というレガシー(政権の遺産)を残し、共和党員、民主党を問わず全国民に愛される大統領として歴史に名を残している。 自分も2期目は全てのアメリカ国民に愛される存在になりたいと考えるトランプ次期大統領が無理に自分をワシントンに合わせず、レーガン氏のようにアウトサイダーの視点から第2次政権を運営しようと考えたのは理にかなっている。それはまた、トランプ氏をこの先レーガン元大統領に寄せていきたいワイルズ首席補佐官の考えとも合致する。