【震災・原発事故13年】被災地医療の灯守る 高野病院(福島県広野町)が事業承継 救急充実へ、ネットで資金募る
東日本大震災と東京電力福島第1原発事故などの苦難を乗り越え、福島県広野町で診療を続けてきた高野病院は事業承継による新体制で歩み出した。今後は救急医療に力を入れるため、クラウンドファンディングで資金協力を募っている。7年前の自宅火災で亡くなった創設者の遺志を継ぎ、地域医療の灯を守ろうと関係者は未来を見据える。 高野病院を運営する医療法人社団「養高会」理事長の高野己保(みほ)さん(56)が退任し、後任の理事長に医師の小沢典行さん(60)、副理事長に徳丸隆文さん(59)が就いた。「地域医療を守るには攻めの姿勢が必要」(小沢さん)と、休止していた救急医療を再開。訪問診療や訪問リハビリも始めた。、クラウドファンディングで調達した資金は血液検査などの救急医療機器導入に充てる。 高野病院は震災当時、100人を超す入院患者を受け入れていた。病院創設者で院長(当時)の高野英男さんは、患者の病状を考えて避難しないことを決断。電気や水が止まり、食料確保もままならない中、診療を続けた。英男さんは2016(平成28)年の暮れ、火災で急逝。娘の己保さんが後を継ぎ、近年は新型コロナウイルスの対応にも追われたが、懸命に復興の一翼を担ってきた。
病院経営を取り巻く環境が大きく変わる中、己保さんは将来にわたって病院を存続する道を模索してきた。各地の病院を立て直してきた小沢さんと徳丸さんに出会い、病院名と職員を残して経営を委ねる決断をした。 「地域の人たちのため、医療を必要とする多くの人たちのために決して医療の灯を消してはいけない」。顧問に就いた己保さんは亡き父の言葉をしのび、新経営陣と力を合わせて病院を支える決意だ。 クラウドファンディングの目標は1400万円で、28日現在の支援総額は225万円。4月12日午後11時まで専門サイト「レディーフォー」(https://readyfor.jp/projects/takanohp119)で受け付けている。