日本が「スケボー」強いのは“治安がいい”から? SNSで盛り上がった“仮説”に競技団体の見解は
スケートパークの急増も後押しに
それに加えて、東京オリンピック以降、スケートパークの整備が全国的に進んでいる。 NPO法人「日本スケートパーク協会」の調査によれば、東京オリンピックが開催された2021年に全国で243か所だった公共スケートパークは、今年5月末時点で475か所と約2倍に増加。前出の中澤さんは、子どもたちが競技にアクセスしやすい環境も、強さを後押ししていると指摘する。 「スケートボードはケガと隣り合わせのスポーツなので、柔軟性があり、ケガをしても治癒が早い子どものほうが、難易度の高い技にチャレンジしやすい傾向にあります。大人の体格では転んだときの衝撃も大きいですし、下手をすれば1回のケガで選手生命が絶たれてしまうこともあるんです。 子どもならではの吸収力もあいまって、ここ数年のパーク急増で若い選手がどんどん育ってきています。これもまた、強い選手を輩出できている背景と言えるのではないでしょうか」
かつては「ガラの悪い若者の遊び」のイメージもあったが…
人気急上昇中のスケートボードだが、ひと昔前には「ガラの悪い若者が深夜の公園で滑っている」といったステレオタイプのイメージや、騒音問題の“やり玉”として語られる場面も少なくなかった。オリンピックでの日本代表選手の活躍や公共パークの増加によって、そのイメージは大きく変わりつつあるようにも思えるが、中澤さんは「注目されただけ、ネガティブな感情を抱く人も増えているのが実際では」と冷静だ。 「応援してくれる人が大半でも、昔のままのマイナスなイメージを持っている人も一定数いるはずです。今後はそういった方たちの理解も得ていかないと、スケートボードが “スポーツ”として定着していかないと思います」 ストリートスポーツである以上、地域との共存は極めて重要だ。法律上、交通が頻繁でなければ公道で滑ることは禁止されていないものの(※)、「交通が頻繁」とは具体的にどのくらいの通行量なのかといった明確な基準はなく、人によって判断が分かれるかもしれない。 ※ 道路交通法第76条第4項第3号は「交通のひんぱんな道路において、球戯をし、ローラー・スケートをし、又はこれらに類する行為をすること」を禁止行為としている。 「ストリートという“遊び”の部分からきた自由さが今の若者にうけている側面もあるので、なんでもかんでもダメだと縛りつければいいというものでもないと思います。 ただし、無理に滑って通行人にケガさせるなどあってはならないことですし、法律も順守しなければなりません。たとえスケートボードが禁止されていない場所でも、一人一人が思いやりやマナーを大切にしなければ、地域にネガティブな感情を生んでしまうでしょう。 協会としても、全国のスケートボードショップなどを通して呼びかけや注意喚起をしています。オリンピックの正式種目となって急激に環境が変わったことで、追いついていない部分もあるかと思いますが、世の中の皆さんと一緒に、ひとつのカルチャーでありスポーツでもあるスケートボードを確立していけたらと願っています」(中澤さん)
弁護士JP編集部