複雑に絡み合う〝野党対決〟自民候補不在の衆院東京15区補選 小池都知事の求心力の行方が「隠れたテーマ」に
【岩田明子 さくらリポート】 衆院3補選は28日の投開票まで1週間を切り、各候補が激しい選挙戦を展開している。9人が出馬した東京15区(江東区)では、自民党が独自候補を立てられない「野党対決」のなか、それぞれの党内事情を受けた複雑な駆け引きが繰り広げられている。 【写真】タスキ姿で現れた根本候補が乱入、音喜多氏に対して紙を向けていた まずは立憲民主党と日本維新の会による「野党第1党VS野党第2党」の構図だ。各種の情勢調査では、立民の酒井菜摘氏(37)の「リード」が伝えられ、維新の金澤結衣氏(33)らが追う展開となっている。維新は最近、立民への態度を先鋭化させている。 馬場伸幸代表は18日の記者会見で、衆院憲法審査会開催をめぐる立民の消極的姿勢や、審査会での立民議員の発言を念頭に「立民はたたきつぶす必要がある」と痛烈に批判した。16日の街頭演説会でも、「立民の国会議員を何人増やしても一緒だ。立民には投票しないでください」と激しいトーンで呼び掛けた。 維新は、3補選のうち東京15区と長崎3区(佐世保市など)で立民と激突している。長崎3区でも、立民候補が先行していると伝えられており、「2敗」となれば維新の存在感は埋没しかねない。馬場氏だけでなく、吉村洋文共同代表(大阪府知事)も東京15区の応援演説で立民を批判しており、維新の焦りが透けてみえる。 対する立民も決して、盤石とはいえない。 最大の支援組織である連合の芳野友子会長は18日の記者会見で、東京15区で共産党と連携していることを「容認できない」と断言した。連合東京が自主投票を決めた。連合はこれまでも共産との選挙協力を否定してきたが、選挙戦に入ってから改めてくぎを刺した影響は小さくはない。他党との選挙協力という「寄り合い所帯」の難しさが露呈したかたちで、立民執行部が今後、うまくハンドリングできるかどうかが1つの課題として、浮かび上がった。 15区補選で、腰が定まらなかったのは国民民主党だ。無所属で立候補した乙武洋匡氏(48)への推薦をめぐって、玉木雄一郎代表は「自民との相乗りは想定できない」という姿勢を取り、自民の推薦見送りを受けて判断した。国民民主はこれまで、政策を前面に押し出してきた政党であるにもかかわらず、政策を置き去りにしてしまった感がある。かつて与党との協調姿勢を見せ、補選では乙武氏を支援する小池百合子都知事と〝共闘〟している姿も、一貫性のなさを感じさせる。 その小池氏の求心力が今後どうなるかというのは、東京15区補選の「隠れたテーマ」といえる。自民と公明党は、乙武氏の支援を検討していたが、過去の女性スキャンダルに対する反発が強く、実現しなかった。月刊「文藝春秋」5月号に掲載された元側近の弁護士、小島敏郎氏の手記で小池氏の「学歴詐称疑惑」も再燃している。