コンフェデ杯をBチームで制したドイツの育成センターを日本は見習えるか
各クラブはもともとアカデミーを傘下に置いているが、より高いハードルが「エリート」を受け入れるために課される。たとえば「エリートシューレ」と呼ばれる選手寮は、DFBから星の数でランクづけされて公表されるため、各クラブとも積極的に投資せざるをえない。 評価の観点は、栄養が計算された食事、地域の学校との良好な関係、家庭教師による補習体制、一人の人間として必要な社会教育、親代わりとなる寮長夫婦の存在などサッカー以外にも多岐に及ぶ。優秀な人材をさらに成長させるための環境を、微に入り細で求められる。 さらに2006‐07シーズンからは2部以上のクラブで外国人枠が撤廃され、新たにドイツ人枠が設けられた。各クラブはドイツ国籍を有する12人以上の選手と契約し、そのうち6人以上が各クラブのアカデミーで育てられた選手であると定められた。 必然的に地元からホープが育つ構図が生まれ、未来のスター候補生を見ようと多くのファンやサポーターがスタジアムへ足を運び、アップした入場料収入からさらに育成への投資が増える好循環が生まれる。 前出したヴェルナーはシュツットガルトで、コンフェデでの活躍で脚光を浴びているゴレツカはボーフムで生まれ育ち、いま現在の所属チームへ移籍している。翻って日本サッカー協会(JFA)はどうか。実はドイツに先駆けて、「シュトゥッツプンクト」に相当する拠点を全国的に展開している。 発足から四半世紀以上の歴史をもつ「トレセン制度」で、ナショナルトレセンを頂点に全国を9に分けた地域トレセン、47都道府県トレセン、地区トレセン、さらにブロックトレセンとピラミッドが形成されている。たとえば東京都は16のブロックに分けられている。 全国から優秀な人材を発掘。U‐15をはじめとする年代別の日本代表へとつながるルートを広げる理想を掲げてきたが、目に見える効果がないと映ったからか、数年前にはJFA内で存続への是非論が起こった。これに猛然と反対した田嶋幸三氏は、現職の第14代会長に就任する前から、すでに長い歴史をもつトレセン制度をより機能させ、浸透させるための組織改革に取り組んできた。 具体的な施策のひとつに、Jクラブや代表チームの監督経験者を「育成のスペシャリスト」として招聘している点があげられる。たとえばFC東京の城福浩前監督は関東地域、ジェフ千葉の鈴木淳元監督は東北地域、なでしこジャパンの大橋浩司元監督は四国地域の統括ユースダイレクターをそれぞれ務めている。携わる指導者の給与を含めた地位を向上させていくことも、欠かせない作業となる。 今年4月からは上位トレセンへの選考実績や指導者の活動実績やレベルなど、一定の基準を満たしたトレセンをJFAとして認定することで、トレセン活動の質を高めていく取り組みも始めた。JFAの技術委員会とJクラブとの連動も密にするなど、10年とちょっとで育成システムを大転換させ、確固たる成果をあげているドイツを理想に掲げながら、日本独自のあるべき姿を追求していく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)