〝酪農魂〟センバツで旋風を 牛乳パワーが元気の源 北海道・別海高校
球児の活躍 地元に活気
日本屈指の酪農地帯・別海町の別海高校は、甲子園球場(兵庫県西宮市)で行われる第96回選抜高等学校野球大会初戦の晴れ舞台に向け、“酪農魂”で練習に励む。離農が相次ぐなど厳しい酪農情勢だが、球児たちの存在が地元を勇気づけている。 【写真で見る】雪が積もったグラウンドでの練習風景 グラウンドの隅にあるハウスでは部員の元気な声が響き渡る。雪が積もったグラウンドの中を走り込み、氷点下を下回る寒空の下で鍛錬を重ねてきた。 同校は普通科と、酪農地帯を支える酪農従事者の育成に特化した酪農経営科の二つの学科を持つ。 16人の部員の中で唯一、酪農経営科に所属し、将来は酪農家を志す遊撃手の影山航大さん(17)は、寄宿舎で毎日飲む牛乳がパワーの源だ。1日1リットルは欠かさず飲み、丈夫な体をつくった。 影山さんの得意科目は乳牛の生態や疾病、乳質改善などについて学ぶ「畜産」。農業実習では重い農業資材を運ぶこともある。授業の一環として出場した共進会では、牛のリードマンコンテストで1等賞を受賞するほどの技術で、牛の扱い方には定評がある。 影山さんの実家は別海町の隣にある中標津町の養老牛地区で、乳牛70頭を飼育する。影山さんは小学生の頃から搾乳や子牛の哺育を手伝っており、今でも休みの日には牛舎に足を運ぶ。「牛が大好き」という影山さん。実家で管理する牛の耳標番号を全て覚え、一頭一頭の性格や繁殖成績なども細かく記憶する。 影山さんは、離れて暮らす父の健一さん(50)から、生まれた子牛の写真を送ってもらう。「搾乳ができる高校球児」として、甲子園でプレーする影山さん。「甲子園ではこれまで支えてくれた両親や地域の酪農家さんらに成長した姿を見てほしい。勇気を与えられるようなプレーをしたい」と誓う。健一さんは「酪農も野球も努力を継続することが大事」とエールを送る。
実家は農家 父が練習支える
同野球部では部員16人のうち4人が酪農家の出身。酪農家の保護者は忙しい作業の合間を縫って、さまざまな面で選手たちを支える。 外野手の林伸悟さん(17)の元気の源も牛乳だ。「持ち前のパワーあふれるスイングで初戦突破を目指したい」と力強く語る。 林さんの父、徳人さん(41)は別海町中西地区で、140頭の乳牛を放牧で飼育する。徳人さんは同校野球部OBで、現役時代は主将を務めた。今は、練習場となるハウスの清掃や粗大ごみの処分や、町が同野球部専用の室内練習場として提供した施設の整備などを手伝い、漁師らと共に、ティーバッティング練習などに使う専用のネットを編むなどして選手を支える。 「ここ数年は酪農情勢が厳しく、つらいことが多かった。その中で母校の甲子園出場は久しぶりの明るいニュース」と笑顔で話す。
日本農業新聞