躍進を続ける「ミュウミュウ」はなぜ顧客に「読書」を勧めるのか?
中国で堅調が続く理由
グッチやバレンシアガなどの高級ブランドを束ねるケリング、ルイ・ヴィトンやフェンディを傘下に置くLVMHなど、名だたる高級ブランド企業が売り上げの低迷や株価の下落に苦しむなか、異質な成長を見せるのがミュウミュウ(プラダ社)だ。 【画像】ミュウミュウの移動式書店 ミュウミュウは9月30日までの3ヵ月間で売上高105%増を記録し、プラダ社全体の売り上げに大きく寄与した。躍進の理由は何なのか? まず、中国でも売り上げが依然好調な点が挙げられる。経済低迷と習近平政権のもとでの「贅沢禁止」の風潮が要因となって中国人の支出は減っており、高級ブランドの業績は軒並み悪化している。しかし、ミュウミュウは若い層を中心に強い支持を受けている。 プラダはSNSでのプロモーションを強化しており、特に中国国内で人気のSNS「小紅書(RED)」上での積極的な配信が、若い顧客獲得に結びついているようだ。 また、ミュウミュウは日本でも堅調な伸びを見せているが、ここでも中国人観光客による後押しがあると英紙「フィナンシャル・タイムズ」は書く。
ミュウミュウが読書を推すのはなぜ?
米紙「ニューヨーク・タイムズ」によれば、ミュウミュウは「読書コミュニティ」の形成など、衣服を超えた分野でのマーケティングも推し進めている。 2024年6月、ミュウミュウは世界の複数の主要都市にポップアップ書店「サマー・リード(Summer Reads)」を設置した。書店には多くの古典文学書が並び、ミウッチャ・プラダ自身が選書を手がけている。ロンドンのサマー・リードに並んでいたミュウミュウのファンの一人はこう語る。 「ミウッチャ・プラダは女性たちが知識を蓄えること、そして声を上げる力を得ることにも情熱的に取り組んでいるのだと思います」 1997から2012年の間に生まれたZ世代は、紙の書籍を好んで読むという調査結果もある。それも古典や回想録など硬派なものが人気だそうだ。こうした時流とミュウミュウのマーケティングがうまく合致しているのかもしれない。 ロンドンの出版社「アイデア・ブックス」を設立したデイヴィッド・オーウェンは、高級ブランドが「読書体験」と自社を結びつけるのは、「ファスト・ファッション」との線引きを明確にしたい思惑もあるからだと、米誌「ヴォーグ・ビジネス」に語っている。 「ファッションの移り変わりは早いですが、高級ブランドは顧客にファスト・ファッションだと認知されるのは避けたいところです。 読書は時間のかかる行為です。高級ブランドは古典的な文学と手を組むことで、品質の永続性やゆったりと時間を過ごす満足感を暗にブランドの価値として示しているのではないでしょうか」
COURRiER Japon