唐十郎ゆかりの新宿・花園神社でテント公演、中村勘九郎・豊川悦司・寺島しのぶら「奇跡」の顔ぶれに
新宿梁山泊は、唐十郎作「おちょこの傘持つメリー・ポピンズ」を15~25日、新宿・花園神社境内に特設した紫テントで上演する。歌舞伎俳優の中村勘九郎、映像作品で活躍する豊川悦司ら豪華な顔ぶれも、大きな注目を集めている。(山内則史) 【写真】2003年、「泥人魚」の初演で天草四郎にふんした唐十郎さん
勘九郎、豊川に加えて寺島しのぶも梁山泊に初参加し、さらに風間杜夫と六平(むさか)直政が脇を固める。劇団主宰で演出の金守珍(キムスジン)は「長く続けてきたから起きた奇跡です」と興奮を隠さない。
発端は2年前の紫テント公演。梁山泊創立メンバーの六平が約30年ぶりに出演した「下谷万年町物語」だった。「ロッペイちゃん(六平)が帰ってくるというので、たくさんの人が見てくれた。芝居後の興奮の中で『こんな熱い芝居をやりたいね』と盛り上がったのが始まりです」
勘九郎は「テント芝居は幼い頃、父(十八代目中村勘三郎)に連れられて行き、大人になってからも何度か体験している。何だか分からないけど最後に涙が出てしまう熱量。役者の原点はここにある」と語る。勘三郎は若い頃に唐の紅テントに夢中になり、これが歌舞伎だと刺激を受けて、後に「平成中村座」を始めている。「今年は父の十三回忌。追善興行をやってきたが、これが一番の追善じゃないかと思う。父には上(あの世)で嫉妬していてほしい」
豊川は1993年のデビッド・ルボー演出「あわれ彼女は娼婦」以来の舞台となる。専ら映像で活躍してきたが元々は演劇青年で、渡辺えり主宰の劇団3○○に7年在籍した。「えりさんは唐さんの弟子みたいなもので、劇団同士で交流もあった。テントにはずっと親しみを感じてきた」
傘屋の職人・おちょこ(勘九郎)が謎の女・カナ(寺島)に傘の修理を頼まれ、いつかカナにメリー・ポピンズの空飛ぶ傘を持たせたいと夢見る。その傘屋に居候する檜垣(豊川)は以前カナと接点があり、それが物語を動かしてゆく。84年の紅テント公演で本作を見ていた豊川が、今回の演目にと提案したという。