新型スバル ソルテラを買えば人と被らない!? 超希少な日本車の実力に迫る
一部改良を受けたスバルの「ソルテラ」に小川フミオが試乗した。日本ではマイナーモデルかもしれないが、あらためて乗ると魅力的な1台だった! 【写真を見る】新型ソルテラの内外装(29枚) 超個性的なステアリングホイールが面白い!!!
優しい1台
ピュアEVでは今、ドイツをはじめ欧州勢が頑張っている感ありだけど、いま、新しいスバルのソルテラに再注目するタイミングかも。広くて静かでパワーもあって、雪道にも強いが、自慢である。 スバルが手がけるソルテラに、久しぶりに乗ったのは、寒さが戻ってきた2024年2月の東京で。荷室には雪道を走るためのギヤが積まれ、タイヤもヨコハマゴムの「アイスガード」というスタッドレスだった。 たしかに、ソルテラは雪道での走りも自慢だ。かつて、カーブの多い積雪路でテストドライブさせてもらった記憶がよみがえった。 トヨタ「bZ4X」の姉妹車ともいえるが、ソルテラのAWDは常時4輪駆動(前輪駆動モデルの設定もある)。かつ、雪や泥など滑りやすい路面走行用に「Xモード」というスバル車おなじみのドライブモードが設定されている。 私はこのところ、欧州やアジア(韓国と中国)のメーカーが開発したピュアEVに乗る機会も多かった。久しぶりに乗ったソルテラは、スムーズな走りでは劣っていないのと、人間工学的なデザイン性の高さで光るものを強く感じさせた。 ピュアEVに興味を持っている人には、一充電での走行距離が542km(全輪駆動モデルは567km)というソルテラの走行性能は十分ではないだろうか。前後ともに169Nmのトルクを持つモーターも、ばかっ速くはないけれど、余裕で交通の流れをリードできる性能ぶりだ。 もうひとつの魅力は、使い勝手のよさ。2850mmのロングホイールベースを活かしきっていて、後席空間もかなり余裕がある。試乗車はタンと呼ばれるきれいな茶系のシートで、後席にいると、伸びやかな気分になれる。 前席はシンプルなデザインで、ダッシュボードには小さな計器盤と、その横にはインフォテインメントシステムのモニター。センターコンソールの表面もすっきりしていて、やはり広々とした気持ちよさが感じられる。 感心したのは、車体のサイドシルの設計。低めでかつ内側にややえぐってあるため、ドアを開けての乗り降りがまことにやりやすい。裾が汚れにくいのは、悪路でのゆたかな経験が役立っているのだろうか。誰にもやさしいクルマである。 優しさという点では、先に触れたとおり、静かで、乗り心地がよいのが大きなメリットだ。くわえて、安全支援装置の数々。ミリ波レーダーと単眼カメラによる、歩行者(昼夜)や自動二輪(昼)まで対象にした衝突回避システムや、右折時や見通しの悪い交差点などでの衝突回避支援システムなど。スバル車の面目躍如たるものを感じる。 内装の仕上げは、先にも少し触れたように、デザイン性が高い。というか、よい質感が追求されている。センターコンソールなど、乗員がひんぱんに目をやる部分は、光沢のあるピアノブラック仕上げ。こういう仕上げ、オーナーには嬉しいものだ。 やや気になるのは、円でなく四角に近いステアリングホイールの形状。おもしろいのだけれど、ステアリングのギヤ比がクイックではないため(積雪路などの走行を前提としたキャラクターも関係しているはず)握りをたとえば“10時10分”で固定するのが難しい。 いきおい、大きめな舵角が必要なときは握りを持ち替えることになるのだけれど、そのときステアリングホイールの4つの“角”がややウザい。ドア開けたときに、このデザインが目に飛び込んでくるのは嬉しいのだけれど。慣れれば逆に扱いやすいんだろうか……そこはすみません、不明です。 スバルは、2023年5月にピュアEVについて「2026年時点、グローバルで20万台の販売を目指していきたい」(「電動化計画の現状」)としている。ソルテラにくわえ、3車種のピュアEV(SUVタイプ)を投入し、4車種で上記目標達成をめざすという。 今後の課題(のひとつ)と考えられるのは、価格(と対価の装備内容)だろう。ソルテラは、前輪駆動で627万円、AWDで671万円から。BMWの最新ピュアEV「iX1 xDrive30」はやや小ぶりだがAWDシステムとユニークなインフォテインメントシステム搭載で718万円、2024年イヤーモデルでいろいろ改良されたフォルクスワーゲン「ID.4」は514万2000円から。仕掛けが楽しいヒョンデの「コナ」は452万1000円、同「アイオニック5」は479万円で購入可能なのだ。なかなか厳しいマーケットである。 ソルテラは日本全国で月に数十台しか販売されていないため、めったに見かけない希少車だが、クルマとしては完成度が高いので人と被らないクルマが欲しい人に良きチョイスかもしれない。いいところをしっかりアピールしてがんばれ! と、応援する。
文・小川フミオ 写真・小塚大樹 編集・稲垣邦康(GQ)