クライマックスが近づく『ONE DAY』の伏線回収はどうなる? 脚本・演出担当から考える
男女3人のクリスマスイブの1日を同時並行で、1クールかけて濃密に描いていく『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~』(フジテレビ系)。12月24日、真夜中0時前後から始まった物語も、辺りが再び暗くなり、もうすぐ18時というところまで進んできた。いよいよ終盤にさしかかっている。 【写真】『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~』中谷美紀インタビューカット 誠司/天樹勇太(二宮和也)の物語はミステリーサスペンス調、桔梗(中谷美紀)のものはミステリー要素もあるヒューマンドラマ調、そして時生(大沢たかお)のものは他のふたりとは一線を画すコメディー調と、それぞれ異なる毛色のように見えるドラマが、複雑に絡み合いながらもうまい具合に調和している本作。だが、実は脚本を手がけているのは徳永友一ただ1人である。 徳永は、2002年にオリジナル作品『同棲倶楽部』が第14回フジテレビヤングシナリオ大賞最終選考対象作品に選出されたことをきっかけにテレビドラマ『電車男』(フジテレビ系)第6話の脚本で地上波デビューをはたす。ちなみにこのフジテレビヤングシナリオ大賞は『カルテット』(TBS系)や『初恋の悪魔』(日本テレビ系)などで知られる脚本家の坂元裕二を輩出したほか、現在放送中の『いちばんすきな花』(フジテレビ系)の脚本を手がけている生方美久も大賞を受賞している。 徳永はその後も順調にキャリアを積み重ね、手がけた作品には、推理小説が原作となっている『探偵の探偵』(フジテレビ系)や本作でミズキ役を務める中川大志が主演を務めた『ボクの殺意が恋をした』(読売テレビ・日本テレビ系)、そして現在公開中の映画『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』などがある。徳永は様々なジャンルの作品を生み出しており、本作は徳永作品の多彩さをひとつにぎゅっとまとめた贅沢なドラマなのである。 演出にも注目してみよう。本作の特徴のひとつは、前回は誠司回、今回は桔梗回、次回は時生回……というように各話ごとに特段フォーカスされる人物がいるわけではなく、1話の中でストーリーの主軸が自然とバトンタッチすることが大きな特徴である。特に印象的だったのは、第6話で描かれたスマホをキーアイテムとして、時生と誠司の関係者が関わり合う場面だ。このきっかけとなったスマホは、第4話でひょんなことから橋の上でぶつかってしまった時生と誠司が互いに取り違えてしまったもの。些細な一瞬の出来事が小さな繋がりを生み、それがその人自身だけではなく、周囲の人々の物語をも大きく動かすことになることをスマホで見事に表現している。 たまに起こるように感じられるセンセーショナルな出来事は、実は突発的なものではなく日常生活の積み重ねの上にある。本作の演出をメインで手がけている鈴木雅之は、ホテルスタッフとして潜入捜査をしている刑事とその教育係であるスタッフが、ホテル内で日常起こるの悲喜こもごもの出来事に向かい合っていく様子を描いた映画『マスカレード・ホテル』『マスカレード・ナイト』などを手がけており、緩くもあり、劇的でもある“日常”をうまく切り取って、魅せることを得意としてるように感じる。 また、鈴木が演出を手がけているドラマには『HERO』シリーズ(フジテレビ系)や『ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~』(フジテレビ系)のように、検察官や放射線技師など、特定の仕事に従事する人たちが奮闘する姿を描いたものが多い。本作も、警察、テレビ局、レストランと様々な仕事場が舞台となっているが、その中でもカレン(松本若菜)や桔梗、梅雨美(桜井ユキ)にみられるように悩みつつも仕事に向き合っている人たちの懸命な姿が光っている。 クライマックスに向けて、ますます目が離せない本作だが、まだまだ解決されていない謎も多い。伏線回収と最後のまとめあげに期待が高まっていく。
久保田ひかる