ウーバーイーツ配達員が配達中に試される「アドリブ能力」【チャリンコ爆走配達日誌】
最近難易度が増しているのが置き配の斜め上案件。住宅地が多い下町エリアに新しく建てられたアパートは、狭い土地でも居住スペースをできるだけ広く作りたいという思いがあるのか、階段や踊り場などの共有スペースをコンパクトにまとめているところが結構あります。 先日も5階建てで各フロア2部屋しかない小型のアパートの5階まで配達に行ったのですが、階段を上がって5階にたどり着くと、フロアが2畳ほどの大きさしかありません。部屋のドアは中から外へと押し開けるタイプ。2部屋同時に扉を開けるとドアとドアがぶつかってしまいそうです。 そんな感じのアパートで「置き配」。しかも注文したのがピザだったため、1段1段の幅が狭い階段に置くこともできません。仕方ないので隣の部屋の人がドアを開けないことを祈りつつ、商品を注文者の部屋のドアにぶつからない場所に置き「このメッセージを見たらすぐに受け取ってください」というメールを送って配達を完了させました。 たまにあるのが土地の分割。広い土地を持っている方が、所有する土地の一部に家を建てて貸し出すパターンが下町エリアでも見られます。土地を売買するのであれば新しい地番が設定されることがありますが、借家の場合、住所がまったく同じというのが主流のようで、配達していると3軒並んでいる家の住所がすべて同じということがあります。 2年ほど前、そんな住所が同じ家が並ぶ家に配達で行ったのですが、同じ住所の家が3軒ありました。しかも表札を見るとすべて同じ名字。どこに配達していいかわからなかったので、注文された方からの注意書きを見ると......。 「【注意】同じ名字の家が3つ並んでいますが、親戚ではないので誤配達はトラブルの原因となります。置き配は間違えずにお願いします。ガレージに赤い軽自動車が停まっています」 時刻は23時過ぎ。スマホのライトをつけて周囲を確認しても赤い車は見当たりません。置き配指定なのでインターホンを押して確認することもできません。注文された方に「赤い車が見当たりません」とメッセージを送っても無反応。電話をしてもつながりません。 3軒の家を見ると、右側の家はガレージに車を停めています。となると、真ん中か左の2択です。さらに観察すると、左側の家は照明が完全に消えています。以上のことから配達先は真ん中の家と推測。家の前に商品を置いて、念の為「真ん中の家に置きました」とメッセージを入れて立ち去りました。その後BAD評価はつけられなかったので、配達先は真ん中の家で間違っていなかったようです。 配達の現場では、このようなことも起こります。運営の皆さん、もしこの連載を見られていたら、注文者用アプリに表記される到着予定時間だけでも幅を持たせていただくよう、仕様を改めていただけたらありがたいです。注文された方も時間に余裕を持たせたほうがストレスが溜まらなくて、お互いにとっていいことだと思います。 文/渡辺雅史 イラスト/土屋俊明