〈トランプ・麻生会談〉「もしトラ」備える外交は重要だが、過激な言動にモノ言う関係は築けるのか
常識外れの言動、身内も嫌悪
しかし、トランプ氏が返り咲いた場合、次期政権と個別案件の処理だけに関係をとどめていいのか。一期目はシンゾウードナルドの関係で波風を立てずにいれさえすれば済んだが、時に常識外れとも映るトランプ氏の価値観、信念、政治信条が明らかになった今、それとどう向き合うかは重要だ。 トランプ氏の主義主張に賛同する人が少なくないのも事実だ。16年の選挙で当初の予想を覆して勝利、合衆国大統領の職を勝ち取った事実、今回の選挙戦でも復帰が取りざたされている人気ぶりがそれを示している。 米国民、有権者の判断であり、それ自体は尊重され、敬意を払われるべきだろう。各国首脳を見ても、ハンガリーのオルバン首相、ポーランドのドゥダ大統領らは熱烈な支持者だ。 しかし、トランプ氏の根本的価値観、政治姿勢が多くの人から支持されているかといえば、どうだろう。人種差別、女性蔑視といわれてもやむを得ない行動、発言は枚挙にいとまがない。 ごく一部を紹介すると、在任中の19年、非白人の女性下院議員らを「国へ帰れ」と罵倒、16年の選挙では不倫相手の元女優に日本円で2000万円もの口止め料を払い、黒人の有力下院議員の地元を「気色悪いネズミばかりのひどいところだ」といわれない中傷発言で攻撃した(19年)。
ホワイトハウス復帰を果たしたなら、自らを訴追した連邦検事らを罷免、氏が扇動したといわれる連邦議会襲撃事件(21年1月6日)で有罪となった800人にものぼる被告に恩赦を与えるとの方針を示し、バイデン大統領の〝犯罪〟を捜査するための特別検察官を任命する意向を表明している。 ことし2月には、北大西洋条約機構(NATO)加盟国が十分な国防費を支出しない場合、「米国は彼らをロシアから守らない。ロシアにやりたいことをやるように勧める」と、その侵略を助長するような発言をして世界中を仰天させた。 こうした言動は、さすがに熱烈なトランプ支持者でも、多くは賛同、支持をはばかるだろう。自由と民主主義という各国普遍の価値観とはとうてい相いれない。 トランプ氏は最近、遊説先のオハイオ州で「自分が当選しなければ国中が火の海になる」「移民は野蛮な動物だ」などと暴言を吐いたが、この時は、支持が圧倒的に強い共和党内でも、トランプ氏に投票しないという人が急激に増えたと米ABCニュースが伝えた。人気急落ぶりは、乱暴な言動が支持層からも嫌悪されていること示す証左といっていい。