《シブがき隊の紅白出場曲『スシ食いねェ!』誕生秘話》布川敏和がホテルの一室で「中トロ、コハダ、アジ…」の注文メモ見て作詞も「印税は大したことない」理由とは
今年で75回目を迎える大晦日恒例のNHK紅白歌合戦。1年を賑わせた歌手が喉を競うこの祭典は入念なリハーサルを行っているが、生放送ゆえハプニングもしばしば起こり、それがまた話題になり人々の記憶に残る。1985年の第36回紅白では、『スシ食いねェ!』を歌った3人組ジャニーズアイドル「シブがき隊」のふっくんこと布川敏和さん(59)が、ステージで派手に転倒。当時の知られざる裏話を布川さんに聞いた。 【写真】現在59歳のふっくん。アロハシャツを着こなし、眩しい笑顔は健在だ
* * * 紅白には「シブがき隊」はデビューした1982年から5年連続で出演したので、僕は年末恒例の大きな歌番組というぐらいの受け止めで、当時は出場できるありがたみがわかっていませんでした。1985年に出場が決まったときは、当時、遊び仲間だったチェッカーズ(当時)の(藤井)フミヤ君と、同い年だった吉川晃司と3人で、「どうせ出演するなら、歴史ある紅白で、今まで誰もやらなかったことをやろうよ」という話に。僕が「ステージから落っこちてみせるよ」と言ったら、フミヤ君と晃司は「本番を楽しみにしていて」とだけ。皆が何をするかはわかりませんでした。 大晦日本番。白組のトップバッターが初出場の晃司でした。晃司は歌唱曲『にくまれそうなNEWフェイス』の前奏の際にシャンパンを口から吹いたうえ、エンディングでは“ギター燃やし”で知られる米国のギタリスト、ジミ・ヘンドリックスを真似て、オイルをまいてギターを燃やしちゃった。リハーサルでは予定していないことを突然始めたものだから、オーケストラの指揮者はビックリ。指揮がグダグダになっちゃって、時間は押すし、次に歌う紅組の河合奈保子ちゃんは歌い始めがわからなくて戸惑ってた。僕は脇で見ながら「こりゃ~大変だ! 怒られるぞ~!」と思っていました。
河合奈保子ちゃんが歌い終わった後は、「シブがき隊」の出番。僕は歌いながら、「このへんで落ちるといいかなぁ」「どのタイミングがいいかな」なんて考えていました。ところが、晃司が撒いたオイルのせいで、足がちょっと滑る。「これはいいな。落っこちるより、オイルのせいでこけたことにしたほうがリアルに見えるぞ」と思ったんです。予定外のことを目論んでたら怒られるので、ハプニングに見せなくちゃいけませんからね。 それがうまくいきました(笑)。歌っていた『スシ食いねェ!』の途中で転んでみせたら、わざととは知らないもっくん(本木雅弘)が驚いて、歌いながら「大丈夫?」ってつい言っちゃって。もっくんは人がいいからね。やっくん(薬丸裕英)? 「ざまーみろ」と思っていたんじゃないですか(笑)。僕は味を占めて「1回目をカメラがちゃんと撮れていなかったかもしれない」と思って、2回目は派手にすっ転んでみせたんですよ。