《リポート》茨城・桜川市 採用試験見直し 人物重視で職員確保 受験者の負担軽減 教養免除・作文廃止
優秀な職員の確保に向け、茨城県桜川市は採用試験の見直しを進めている。全国の試験会場で受験できる「テストセンター方式」を2年前に導入し、本年度も作文試験を廃止したり、専門職の一部の試験区分で教養試験を免除したりと、応募者が集まるよう工夫を重ねる。地方公務員のなり手不足が各地で課題となる中、市は競争率の維持へ試行錯誤する。 ▼歓迎 18日午後、同市羽田の大和ふれあいセンター「シトラス」。市主催の若者向け企業説明会の一角に「桜川市役所」のブースがあった。 「その場でお題を出して書いてもらっていたが、皆さん大変だったと思う」。市の担当者は、作文試験廃止の理由を参加者にこう伝えた。その上で「面接試験の配点を高くした。より人物重視で、面接試験の結果で採用が決まっていく」と話し、受験者の負担軽減につなげるとした。 説明を聞いた同県筑西市、県立高3年の杉山渓甫さん(18)は「負担を軽減してくれるのはありがたい」と歓迎。「公務員もやりがいがある仕事と聞いた。市を盛り上げる仕事がしたい」と意気込む。 ▼裾野拡大 これまで作文試験は2次試験で行われ、「文章表現力」などを確認する役割を担ってきた。 市は本年度から作文試験を廃止し、2次試験は従来の個別面接試験に絞る。また専門職の試験区分のうち、「土木」は1級土木施工管理技士、「建築」は1級建築士の資格保持者について、1次試験の教養試験を免除する。 市は2022年度から「テストセンター方式」を1次試験に採用し、「受験しやすい採用試験」を掲げてきた。23年度には10月採用にも乗り出した。 今回の作文試験廃止で「人物重視」を打ち出し、受験者の裾野を一層広げたい考えだ。 ▼危機感 少子化などを背景に、地方公務員の受験者は減少傾向をたどる。 総務省の調査では、地方公務員の採用試験の競争率が、22年度に5.2倍と過去30年間で最低。各自治体は、試験対策が必要な科目を廃止するなど見直しを進める。 市も21年度の採用試験で危機感を抱いた。市職員課によると、一般事務の受験者が過去10年で最少の20人となり、競争率は前年度比1.2ポイント減の1.8倍に。この時は職員全体の年齢構成を考慮し、年齢要件を絞った事情もあったが、10年前の受験者は159人だった。ここ数年は減少傾向にあった。 テストセンター方式を導入し、受験者は22年度75人、23年度78人と改善した。同課の担当者は「気軽に受けられる分、2次試験での辞退率も上がったが、そのデメリットを見てもこの受験者数は大きい」と説明。「競争率を維持できないと優秀な職員を確保できない。多くの方に受験していただきたい」と話した。
茨城新聞社