浜松・天竜川で“珍岩”発見 プレート深部の高圧下で変成「礫岩片岩」 地球環境史ミュージアムに展示
浜松市天竜区二俣町の天竜川東岸で、プレートの沈み込み帯深部の高圧環境下で礫岩(れきがん)が変成作用を受けてできた「礫岩片岩」の巨大な転石が見つかった。県内でまとまった礫岩片岩が見つかるのは87年ぶりと極めて珍しく、専門家は「プレート境界での岩石の変成過程を調べる上で貴重な資料」と今後の研究に期待を寄せる。転石は静岡市駿河区のふじのくに地球環境史ミュージアムに運ばれ、10日までに常設展示が始まった。 昨年11月に、元高校地学教諭で同ミュージアムの客員研究員青島晃さん(69)らが二俣城跡の石垣の調査をしていた際に、周辺の地層を観察する過程で発見した。大きさは縦約40センチ、横約60センチ。地下深くの高い圧力がかかる環境で鉱物が引き伸ばされて一定方向に配列した片岩特有の面構造「片理」が見られる。 同ミュージアムなどによると、九州から関東まで横断する断層「中央構造線」の太平洋側に位置し、天竜川流域を含む地質帯「三波川帯」では、砂質や泥質の片岩や緑色の鉱物を含む緑色片岩などが多く見られている。礫質の片岩が見つかるのはまれで、露頭に限ると県内では浜松市天竜区水窪町で1937年に見つかった1カ所しか把握されておらず、その場所も現在では確認できないという。 粒径2ミリ以上の石が集まった礫岩の片岩は、引き伸ばされたそれぞれの石の形を解析することで、過去にどんな変形を受けたかが推測できる。静岡大の増田俊明名誉教授(構造岩石学)は「変形解析で最も重要なひずみが定量的に分かる。岩石の面構造の形成過程や過去の応力場を調べる鍵になる」と指摘する。 同ミュージアムは、片岩を切断して断面が見られるように加工し、野外で常設展示している。今後は説明板も設ける予定。青島さんは「身近な河原にも価値の高い石が転がっている。展示を通して県民に地質学、地球科学に興味関心を持ってもらいたい」と話した。 <メモ>三波川帯の岩石は、海洋プレート上の堆積物が大陸プレートの下に沈み込む過程で陸側に付け加わった「付加体」の岩石が、中生代のジュラ紀~白亜紀に沈み込み帯の深部で広域的に変成作用を受け、後に地表に露出したと考えられている。礫岩片岩は、徳島県の大歩危、小歩危で分布が確認されている。
静岡新聞社