【漫画家に聞く】バックパッカー用語「沈没」ってどんな意味? 世界を股にかけた一人旅の日常描くエッセイ漫画が面白い
バックパッカーの間で根付いている言葉「沈没」。各地を転々とすることなく、訪れた土地に留まりつづけることを指す言葉なのだという。そんな「沈没」した旅人たちの日常を描いた漫画『旅ノ日常』が2024年8月にpixivにて投稿された。 バックパッカーの日常が面白いエッセイ漫画『旅ノ日常』 本作は作者・早瀬川弥生さん(@h_yayoi_h)のエッセイ漫画であり、早瀬川さんは過去にバックパッカーとして世界の各地を渡り歩いていたという。自身の旅を漫画として描いたきっかけ、海外旅行の魅力など、話を聞いた。(あんどうまこと) ーー本作を創作したきっかけを教えてください。 早瀬川弥生(以下、早瀬川):本作は10年程前に描いた作品なのですが、15年程前にはバックパッカーとして海外を渡り歩いていました。そんななか旅のなかで知り合った人と話をすると、旅のあるある話でずっと盛り上がったりしてーー。そんな旅のあるあるネタや作中でも描いた「沈没」気味な人たちを漫画で描きたいと思い、本作を創作しました。 自分がバックパッカーを始める前に日本人が宿泊する宿の情報について調べるなか、滞在中の雰囲気までは知ることがむずかしかったです。これから海外旅行をはじめる人にも宿での雰囲気が伝わるようなものを描いてみたいと思ったことも本作を創作したきっかけです。 ーー「沈没」を本作ではじめて知りました。 早瀬川:海外で旅をしていると、ときに観光することに疲れてしまうタイミングがあるのです。物価が安くてご飯も美味しい、居心地のよい街でのんびりすることで、次の旅への英気を養うことができます。1週間くらい沈没する人もいれば、1年ちかく沈没している人もいましたね。 ーー本作のなかで印象に残っているエピソードは? 早瀬川:作中で描いた「シェア飯」ですね。日本人宿に宿泊しているみんなで夕方頃からお酒を飲みつつ、現地のご飯や日本食を協力しながらつくり、旅の話をしながら食べたことが印象深いです。 日本にいたら会わないような人たちと旅という共通項で仲良くなり、旅の話だけでなく自分の人生観とか、恋愛話といったお話ができたのはいい体験でした。 ーー早瀬川さんの感じる海外旅行の魅力とは? 早瀬川:日本にない文化や景色を見て、日本ではなかなか会えない人と話せる「非日常感」だと感じます。また海外だけでなく国内旅行でも、いつもの日常から少し離れた土地へ行くことで心が動かされ、日々を過ごすなかで心の中にたまった澱(おり)のようなものが一瞬でも晴れ渡るーー。それが旅の魅力だと思います。 加えて私は英語があまり話せないのですが、そんな私でも海外での旅をやり遂げることができたときの達成感が、私が海外旅行にとりつかれてる理由の1つだと感じます。 ーー「非日常感」と共に「達成感」も感じることができる……。 早瀬川:私の場合はあくまで旅行なので大冒険みたいな出来事はないのですが、小さなチャレンジをやり遂げて、無事に帰国し「やっぱり日本っていいな」と思うところまでが旅のワンセットだと思います。 ーー自身の旅を題材に漫画を描きはじめたきっかけは? 早瀬川:幼い頃から漫画が好きで、少女漫画家になることを目指していました。大人になってから漫画家になる夢を諦めたのですが、同じ時期に旅をするようになってーー。旅先では漫画みたいなことが多く起こり、まるで自分が漫画の主人公になったかのような高揚感もありました。 そんな旅先での体験を漫画にしてみたら面白いんじゃないかと思い、本作のような旅漫画を描くようになりました。旅先で感じた気持ちとか、訪れた土地の空気感など、言葉だけでは表現することがむずかしいものを忘れないために描いています。また私の中に「自己表現がしたい」という思いがあったことも旅漫画を描きはじめたきっかけです。 ーーこれから海外へ旅をしようと思っている人へのアドバイスをお願いします。 早瀬川:旅は行きたいときに行った方がいいと思います。時間は有限であり、かつ世界情勢は流動的なものなので、行きたいと思っていた国がいつでも行けるとは限りません。 過去に1度訪れた国にまた行きたいと思っているのですが、現在は内戦などの影響から行くことがむずかしくなってしまっていてーー。情勢が落ち着いたとしても、その頃には体力や金銭面の理由で訪れることがむずかしくなってしまうこともあるでしょう。 やっぱり旅は行きたいと思ったときに行った方がいいと思います。好奇心と勇気を持って旅に出てみましょう! ーー今後の活動について教えてください。 早瀬川:これからも旅と漫画制作は続けていきたいと思います。自分が行きたいと思ったところに旅をして、そのとき感じたことを漫画にして、この先も描き続けていきたいーー。今はただ、それだけです。
あんどうまこと