「オオカミの家」の鬼才レオン&コシーニャが新たに放つ奇譚「ハイパーボリア人」
「オオカミの家」のレオン&コシーニャ監督が長編第2作として、チリの現代史やナチス・ドイツをモチーフに虚実入り混じる不思議な世界を紡いだ「ハイパーボリア人」が、2025年2月8日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国で順次公開される。ポスタービジュアルが到着した。 女優で臨床心理学者のアントーニア(アント)・ギーセンは、謎の幻聴に悩むゲーム好きの患者の訪問を受ける。その話を友人の映画監督レオン&コシーニャにすると、二人はその幻聴が実在したチリの外交官にして詩人、そしてヒトラー信奉者だったミゲル・セラーノの言葉であると気づき、これをもとにアントの主演映画を撮ろうと提案。言われるがまま、セラーノの人生を振り返る映画を撮り始めたアントだったが、いつしか謎の階層に迷い込み、チリの政治家ハイメ・グスマンから、国を揺るがすほどの脅威が記録された映画フィルムを探すよう命じられる。カギとなる名前は“メタルヘッド”。アントは探索に乗り出すが、危機が待ち受けていた……。 〈ハイパーボリア人〉とはギリシア神話やH・P・ラヴクラフトらが創作したクトゥルフ神話に登場する架空の民族だが、本作では太古の昔に宇宙からやってきて地球を支配した半神の巨人たちと説明され、チリとの驚くべき関係が語られる。 実在した親ナチ文化人ミゲル・セラーノや政治家ハイメ・グスマンが登場し、さらに俳優アントーニア・ギーセンやレオン&コシーニャ監督が実名で出演することで、現実と虚構、過去と現在の境界は不確かなものに。そして、20世紀初頭にトリック撮影で摩訶不思議な映像世界を生んだフランスのジョルジュ・メリエスやスペインのセグンド・デ・チョーモンをリスペクトするレオン&コシーニャだけに、実写、影絵、アニメ、人形、16ミリフィルム、ビデオなどさまざまな表現が飛び出すのも特徴。 前作同様、美術館で来場者に制作プロセスを見せながら撮影するスタイルで、背景や人形は多くの若者とのワークショップで作られた。監督たちは「何かを決断する、ものを作り上げるといったことに関する困難にまつわる作品でもある」と語っている。 映画は第77回カンヌ国際映画祭の監督週間でワールドプレミアを迎え、第57回シッチェス・カタロニア国際映画祭や第41回ミュンヘン国際映画祭でも上映。「没入体験型の野心的で実験的なサイコドラマ」(screendaily)、「政治的健忘症に警鐘を鳴らす痛烈な作品」(The Film Stage)などと評された。 なお、レオン&コシーニャが“描き”アニメーションにより、ピノチェト軍事政権下で行方不明になった未成年者たちを追悼した短編「名前のノート」も同時上映される。併せて注目したい。