同学年記者が見てきた巨人・立岡宗一郎コーチという男 思い出のYouTube動画『やりたいことの見つけ方』
【球界ここだけの話】巨人・立岡宗一郎3軍外野守備走塁コーチ(34)は今季限りで現役を引退したばかり。11月10日に終了した秋季練習では、バリバリに動ける体で若手の鍛錬に付き合った。「勉強しながら頑張ります」と語る表情は使命感に満ちていた。 【写真】巨人・立岡宗一郎コーチ「僕が想像していた引退とは違った」 記者は巨人担当として立岡宗一郎という選手の浮き沈みを見てきた。担当1年目だった2015年、25歳だった立岡は突然巡ってきた1軍スタメンのチャンスをつかみ、打率・304でブレーク。30歳前後は1軍と2軍を行き来し、近年はベテランとしてチームの穴を埋めた。 22年には左膝前十字靭帯損傷の大けがもあった。1試合、1打席の結果で立場が変わる世界の空気感を、同学年のプロ野球選手を見ながら私も学んだ。プレッシャーで機嫌が悪くなることや、チヤホヤされて周りが見えなくなることがあってもおかしくないが、立岡は決して態度に出さない。謙虚で男らしい性格を尊敬していた。 熱い一面もある。19年の2軍に落ちていた時期、ジャイアンツ球場の室内練習場で、緊張感を欠いた様子でふざけていた20歳前後の若手たちを「そんな気持ちで練習していていいんか。結果を残さないとクビになるのは自分なんだよ!」と叱った場面を見た。後日、真意を尋ねると「本当はあんなこと言いたくないよ。人に強く言うのってしんどいし」とチームと若手のために心を鬼にした〝男気〟を知った。 数年前の秋。戦力外を覚悟していた立岡は「もし野球がなくなったら、俺は何をしたらいいんだろう」と動画を検索した話をしてくれた。お笑いコンビ、オリエンタルラジオ・中田敦彦のYouTubeチャンネルにあった『やりたいことの見つけ方』という動画を見たのだという。 中田が生き方に迷う社会人に「自分の長所は」「思春期に影響が大きい体験は」など、さまざまな自己分析を提示するという約40分間の内容。しかし、立岡には新たにやりたいことは見つからなかった。「結局自分がやりたいこと、自信を持てること、大好きなことは全部、野球なんだなって」。自分自身の気持ちを再確認し、練習に打ち込むモチベーションにしていた。熱い言葉が印象的だった。 プロ16年目で現役生活を終えるときが来た。第2の人生は若手を育成するコーチ業。野球と向き合う〝やりたいこと〟が仕事になった。