料理通じて「ロヒンギャ」の今を知って 日本に逃れた女性、異文化理解や偏見解消願い
生まれ故郷ミャンマーの料理を通じて、イスラム教徒少数民族ロヒンギャの今を伝える女性がいる。自身もロヒンギャで、現在は東京都に住む長谷川留理華(はせがわ・るりか)さんだ。2001年に来日し、その後日本国籍を取得。ミャンマーでは今も同胞への迫害が続く。「料理という身近なテーマをきっかけに、ロヒンギャのことを少しでも知ってほしい」と願う。(共同=重冨文紀) 2023年12月、東京都内のイベントスペースで開かれた料理教室。「初めて嗅ぐ香り! 面白い」。珍しい食材や香辛料に、参加した親子約20人の声が弾んだ。テーブルに並んだのは、鶏肉やスパイスを米と炊き込んだ「ビリヤニ」と、発酵させた茶葉をまぜたサラダ「ラペットゥ」。どちらもイスラム教の戒律に従ったハラル食だ。味わった後は、長谷川さんがロヒンギャの現状について「母国では今も差別や虐殺が行われている」と語った。 長谷川さんはミャンマー西部ラカイン州生まれ。国籍を与えられず、父親は教育者だったことを理由に指名手配された。日本に逃れた父親を追い、12歳で来日。多くのロヒンギャが暮らす群馬県館林市に住み始めた。
中学生の頃、見た目や宗教を理由に同級生から差別を受けた。弁当にハラル食のカレーを持って行くと「いつもそんなもの食べているから肌が茶色いんだ」と言われたことも。「日本でも差別されるのかと絶望した」と振り返る。 無国籍を理由に大学進学や留学はかなわず、就労に困難を感じたこともあった。今は同じロヒンギャの男性と結婚して5人の子を育て、日本語も流ちょうに操る。「私はもう日本人だが、食や宗教など変えられないアイデンティティーもある」。好きな料理を紹介する教室を2018年から始めた。 母親と教室に参加した東京都西東京市の佐久間玄太(さくま・げんた)さん(12)は「ロヒンギャの人や料理を知る機会になった」と笑顔だった。長谷川さんは「教室が異文化理解や偏見の解消につながり、ロヒンギャへの支援が広がればうれしい」と語った。