房州うちわの職人育成、地道に継続(千葉県)
房州うちわ振興協議会が、うちわ職人を目指す人に腕を磨いてもらう取り組みを地道に続けている。今は協議会が開く週2回の練習の場に数人が通う。同会は伝統工芸の技を次代につなぐため、今後も職人を目指す人を支えていくことにしている。 同会は、うちわづくりの入門講座を2013年度から毎年10~11月、5回に分けて開講している。材料の竹の伐採から商品として仕上げるまでの工程を体験してもらう。講座の終了後も公共施設などを借りて入門講座後もうちわづくりを学びたい人向けに練習の場を設けてきた。 練習場所として借りた障害者施設が2019年の台風被害で取り壊されたり、移った先の公共施設が老朽化で閉鎖されたりといった憂き目を見ながらも、現在は南房総市の富山平群コミュニティーセンターで毎週水曜日と土曜日の午前10時~午後3時に練習会を開いている。 今期の参加者には十数人が名を連ねているが、本業で忙しかったり次第に足が遠のいたりする人もいて、「常連」は数人ほど。 館山市の吉良明美さん(51)は熱心に参加する一人だ。2018年の入門講座を受講し、今も練習会場で技の習得に努める。出身地の鴨川市で子どものころ、盆踊りで房州うちわを手に踊った記憶が頭に残り、自分でつくりたいと思ったのが受講のきっかけだった。今は1シーズンに自宅などで250本ほどのうちわをつくる他、南房総市のうちわ店に300本ほどを納品している。それでも、もっと数多くつくれるように「手が早くなりたい」と話す。 佐生真理子さん(48)は、結婚で都内から館山市に移り住んで2年。市内を車で走っていて「房州うちわの里」という文字を見かけ、興味を抱いた。2022年の講座を受講。今は毎週火曜日に練習会場に足を運ぶ。「まずは納得できるものをつくれるようになるのが第一。その先に売れるようなレベルのものが生み出せれば、(職人として)見えてくるものがあると思う」と控えめだが、太田美津江会長(72)は「それじゃいけない。先に踏み出す、前に進むことも必要」と叱咤(しった)する。 大正末期から昭和初めの最盛期には、年間700万~800万本が生産され、内職も含めて1000人ほどの作り手がいたといわれる房州うちわ。同会によると、今は職人、内職を合わせても確認できるだけで10人ほどという。 太田会長は「入門講習を受講しても、(作り手として)続かない人もいる。それは仕方がないこと。ただし、興味がある人を受け入れる間口は広げておきたい」と話し、協議会としてうちわ職人に関心がある人への扉を開く取り組みを続けることの重要性を強調する。