20分レッドカードに「NON」。フランスラグビー界、あらためて導入に反対意思示す。
10月8日、ワールドラグビーが、「WXV、パシフィック・ネーションズカップ、ザ・ラグビーチャンピオンシップなどで導入された試験的ルールが成功を収め、執行委員会による承認を受けた。これらの試験的ルールの世界的な採用に向けてさらに一歩前進した」と発表した。 新ルールの内容には、コンバージョンキックの制限時間短縮、スクラムとラインアウトの30秒制限、リスタートキックに対する22mライン内でのマーク、モールのワンストップボールアウトなどとともに、『20分レッドカード』が含まれている。 「レッドカードを受けたプレーヤーを20分後に交代させる機能を特徴とした簡素化したレッドカードのプロセスも、ワールドラグビーの大会での最初の試行が成功したことを受け、支持された」とワールドラグビーの声明に記載されている。 その『20分レッドカード』にいち早く反応したのがフランスラグビー界だ。 10月14日、フランス協会、LNR(フランスプロリーグ運営団体)、フランス選手組合が連名で声明を発表した。 「フランス協会、LNR、フランス選手組合は、20分レッドカードの採用に断固反対する。特に選手の安全にインパクトを与える、非常に重要な罰を変更する前に、説得力のあるデータを拠り所とすることをワールドラグビーに求める」 「フランス協会、LNR、選手組合にとって、レッドカードはスポーツの精神に反する行為を抑止する非常に重要なツールで、選手の身体的安全を守るものである。この罰を一時的な退場に変更することは、選手の安全こそが最優先事項であるべきなのに、それを脅かすような危険な行為を助長する恐れがある」と警鐘を鳴らす。 このルール改正がプレーに与える影響については、「ゲームフローの向上につながると考える人もいるが、フランス協会からワールドラグビーに提出した統計は、レッドカードを受けたチームが必ずしも負けるとは限らないことを示している。トップ14とティア1国のテストマッチの480の試合をベースにした分析によると、レッドカードを受けたチームの60%だけが敗れている」と、レッドカードが必ずしも勝敗を決めるものではないことを訴えている。 フランスは、今年の5月にもこのルール改正案に反対の意向を示しており、今回、あらためて「NON!」を提示した形となった。 現地では今回のワールドラグビーの発表後、『20分レッドカード』についての議論で盛り上がっているが、反対意見が圧倒的に多い。先週のトゥールーズの試合2日前会見でも、ユーゴ・モラ ヘッドコーチ(HC)が意見を求められた。 「エンターテイメント性を高めようという意図があるのでしょう。そのため、より大胆にプレーを仕掛けられるコンプリートなチームにすることが必要になり、その方向でルール改正も必要なのでしょう。私にとっては、20分レッドカードは明らかに間違っている。レッドカードを出されるような反則をしたにも関わらず他の選手が交代で入ることができるというところに、哲学的に問題を感じる。ディシプリンを求めているのに、そんな『切り札』を与えてしまうと矛盾が生じる」 「私はルール改正に反対というわけではありません。私たちの競技は、この20~30年で最もルールを進化させてきた団体競技ではないでしょうか。U20の世界大会でリスタートから22mラインの内側でマークできるようになったことなど見ていて、チームはルール自体よりもルール改正後の戦術に対応しているように思えました。ルール改正に意義があるのかどうか、私より適任の方がいらっしゃるので、その方たちを信頼して任せて、今は遠くから注目しています」と、コーチとして決められたルールに従うだけという態度を示している。 この話題はラジオのラグビー番組でも議論され、「レッドカードは選手の安全を守るものでなければならない。また、ラグビーはチームスポーツで、カードは『個』を罰するものではなく、『チーム』を罰するもののはず」と元フランス代表WTBヨアン・ユジェが語ったのを受け、記者は「NZ、特にオーストラリアが経済的に困難な状態で、ラグビーの人気を高める必要がある。そのためにゲームのエンターテイメント性を高いものにしたい。それがスーパーラグビーに期待されていることだから。ワールドラグビーもその方針を選ばざるを得ないのではないか」と推測する。 11月14日に開かれるワールドラグビーの理事会でも、フランス協会はこのルール改正に反対の姿勢を示すとしている。 (文:福本美由紀)