「パワハラ、モラハラ、ブラック、搾取…マジ意味わかんない。小説はあんまり儲からないかもしれないけど一人でやってるから自分でケツ拭けないことはしないです」ごみ清掃員からすばる文学賞を受賞した大田ステファニー歓人《前編》
ill $hit小説家 #1
第47回すばる文学賞を受賞した小説『みどりいせき』で鮮烈なデビューを飾った大田ステファニー歓人。隠語やスラングを交えながら、プッシャー(薬物の売人)を生業とする高校生たちの自立と抵抗を描き、選考委員からもその独特の文体を激賞された、若き作家の実態に迫る。 【写真】「題名は“撮るものは撮られる”」と笑いながら撮影に応じる大田ステファニー歓人
「ステファニー」の名前はかわいいから
――大田ステファニー歓人というペンネームは、どのタイミングでつけたのですか? 大田(以下、同) すばる文学賞の最終に残って、誌面に名前が載るってなったタイミングですね。本名で応募していたので、編集者さんから「本名のままでいいですか?」と聞かれて、本名はリスクあるし嫌だなって。妻もいるし、無事にいけば子どもも生まれる予定なので、プライバシーは守りたかった。子どもも、まわりも父親が小説を書いていることは知らなくていいかなって。 ――名前の由来はあるのでしょうか。 妻のかおりんと籍を入れるときに、うちは婿養子でもよかったんですけど、彼女のほうがうちの名字がほしいってなって、結果そうしたんですけど、それだと彼女の名字がなくなっちゃうのが悲しい。なので、ペンネームは彼女の名字からつけました。ステファニーは単純にかわいいから本名をもじって、ゲームのキャラに名前をつける感覚で。 ――受賞したことで、まわりからの反響は? 友だちとか職場の人とか、まわりの人たちが喜んでくれたことで、受賞してよかったなって思いました。獲るとは思いつつ、結果が出るまではドキドキして、自分空気だけで感じるタイプなので、決まるまでは深く考えないようにしてたんです。考えすぎると、かおとのプライベートな時間に支障が出ちゃうので。自分がバッド入るきっかけが増えるのはよくない。 ――「すばる」のほかに、「群像」の新人文学賞にも応募していたとのことですが、ウェブなどのメディアで自ら小説を世に出そうとかは思わなかった? ちゃんと小説家として扱ってもらうなら新人賞を獲るくらいしかないかなって。実はネットでも別名義で発表した文章はあるんですけど、内容が過激すぎて炎上したりもしてたので、それはもうなかったことにしてます。 ――創作や書くことへの切実さはずっとあった? そこまで切羽詰まった感じでもないですね。趣味っていうとあれですけど、ミュージシャンが音を出すとか、映画撮ってる人がふだんからカメラを持ち歩くみたいな感覚で、うちは言葉とか文章に接している感じです。
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