「ゆとり教育」で教科書から消えた3桁同士の掛け算。「493×738」を筆算するときの考え方
食塩水の濃度や往復の平均速度など、仕事などでちょっとした算数の知識が問われる場面に出くわして、ドキッとしたことはないだろうか。「昔は解けたのに……」、そう思うのに解けない。そんな大人たちは本連載で今一度、算数を基礎から学び直してみてはどうだろう。 【漫画】月500時間、時給340円…雇われ店長が明かす「過酷すぎるコンビニ勤務」 長年、算数・数学教育に携わってきた桜美林大学名誉教授・芳沢光雄氏の新刊『大人のための算数力講義』(講談社+α新書)より抜粋して、「算数の重要な考え方」をお届けする。 『大人のための算数力講義』連載第18回 『1/10の確率で採用される採用試験、20社受けたら採用の「期待値」は何社? 』より続く
筆算の意味
最初に、足し算と引き算に関しては、省略することをお許し願いたい。 次に、掛け算に関しては、繰り上がりの部分を理解するために、3桁同士の掛け算で復習するのが適当である。たとえば、 493×738=363834 の掛け算は、筆算では となる。
0の省略に注意
最初の段、2番目の段、3番目の段はそれぞれ以下の式を意味している。 493×8=3944 493×30=14790 493×700=345100 ちなみに最初の式を見ると、3×8で2が十の位に繰り上がり、次に9×8にその2を加えて、7が百の位に繰り上がる。このように、次々と繰り上がっていく仕組みを理解するには、2桁同士の掛け算では不十分である(後述のドミノ倒し現象の説明を参照)。 そして、次式に留意して、最後の段を導いている。 493×738=493×(8+30+700) =493×8+493×30+493×700 なお、筆算の2番目の段では14790の最後の0が、3番目の段では345100の最後の00がそれぞれ省略されていることに注意する。 2005年頃、インドのある算数教科書を見ているとき、ふと下記のような記法で指導している部分を見つけて感激したものである。