『時をかけるな、恋人たち』を何度だって見返したい
SFでしか生まれない 愛の言葉
最終回。監査員(津田寛治)に非難され、記憶を消される廻と翔。しかし、記憶は消えていなかった! 翔の差し金で八丁堀(シソンヌじろう)が記憶を消す装置・フォゲッターに細工をし、機能しないようにしていたのだ。けれども翔は「時の牢獄」に入れられてしまい、いつ会えるかもわからない。一人になり、タイムパトロールの仕事も辞した廻は考える。 「離れていても、過去と未来でも、それぞれの時間で確かに生きている」 「だからタイムトラベルなんてなくても」 大切な誰かが、いつかのどこかにいる。そのことを支えに生きていく道もあったのかもしれない。けれども脱獄という大きな罪を犯して、翔は再び廻の前に現れた。 「未来で待てなかった」 SFじゃなきゃ生まれない、翔の愛の言葉! さらに「いつかのことより今を大事にしよう」という廻のセリフは、実際に時をかけることのできない私たちにも刺さる。 最終回終盤、逃避行を続ける二人に、映画『リバー、流れないでよ』(原案・脚本/上田誠)を思い出していた。あの中では主人公たちは、ただただ2分間を繰り返す。そんな中で主人公と恋人とが、この場から逃げようと画策する。そのなんとも言えない開放感と無敵な気分! そうそう、伝説の恋人・マギー&キケロの正体も痛快なものだった。
何度でも見返したい 最強カップルの旅
どこまでも突飛なこのタイムトラベルラブコメディ。けれど、1話からすんなりと受け入れられ、最後まで楽しく見続けることができた。それは、吉岡里帆と永山瑛太、二人が演じた廻と翔のキャラクターのかわいらしさと、上田誠脚本のポップでありながら常にリアルと繋がっている温度感によるものだろう。廻の全てを捨てて時をかける自由さに憧れ、その一方で「明日の出社に間に合えば」と仕事のことを忘れない姿には共感せざるを得なかった。伊藤万理華、シソンヌじろう、石田剛太といったタイムパトロール隊員たちの存在も大きい。どこかレトロな基地やタイムボードにも親しみを覚えた。 8話「サマータイムパトロール・ブルース」で登場した大学時代の翔が持っていたスマホが、かつて瑛太が出演した映画『サマータイムマシンブルース』に登場した部室のエアコンのリモコンだったなんてぐっとくる仕掛けは、演出の山岸聖太によるものだろうか。 こうして振り返ってみると、やっぱり廻のタイムトラベルの道筋を改めてたどりたくなってくる。ドラマをもう一度最初から見るというタイムトラベルは、何度だってできる。 ―――――――――― 番組情報 『時をかけるな、恋人たち』(カンテレ) 脚本:上田 誠(ヨーロッパ企画) 監督:山岸聖太、山口淳太 出演:吉岡里帆、永山瑛太、伊藤万理華 他 プロデューサー:岡光寛子、白石裕菜 主題歌:Chilli Beans.『I like you』 FOD、U-NEXTにて全話配信中(有料) ―――――――――― 釣木文恵/つるき・ふみえ ライター。名古屋出身。演劇、お笑いなどを中心にインタビューやレビューを執筆 まつもとりえこ イラストレーター。『朝日新聞telling,』『QJWeb』などでドラマ、バラエティなどテレビ番組のイラストレビューを執筆。趣味はお笑いライブに行くこと(年間100本ほど)。金沢市出身、東京在住。 Edit: Yukiko Arai
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