まずは富裕層向け。銀座から世界一を目指す「長寿クリニック」
価値の高い成分を応用
そうした治療の領域から、予防医療の領域へ。ことの始まりは、23年春。再生医療のクリニックを構想していた井上が、知人を介して出会った澤に“培養上清液”について尋ねたという。「直感というか、嗅覚が鋭い人だなと思いましたよ」と澤は振り返る。 「我々の目的はiPS細胞由来心筋細胞シートの製造ですが、その過程で得られる培養上清液に分泌される活性成分をを検証した結果、かなり高い細胞の活性があることが確認できたのです」 これをもともとの知人であり、この領域の専門である日比野にシェアすると、それに非常に価値のあることがわかり、澤、井上、日比野という二人三脚でプロジェクトが動き出した。 5F、6Fのクリニックでは、ヒトiPS細胞由来心筋細胞研究の知見を強みとして、長期的な健康管理をサポートしていくという。 また、体を構成する細胞は37兆~60兆個あるが、それらがどう動いて、どう統合されるかなどはまだまだ解明されていない。THE HUNDREDクリニックと連携しながらデータをとっていくことで、澤は「予防医学や未病をサイエンスとして解明していけるのではないか」とも考えている。 ◾️再生医療だけ、西洋医学だけでなく では、アーユルヴェーダや発酵料理まで取り入れているのはなぜか。 「お金があっても健康でなければ」というのは富裕層の悩みで、健康への投資を惜しまない彼ら/彼女ら向けに、食事や運動といった生活習慣指導から検診、治療までをカバーするクリニックが誕生している。しかし、先端医療とアーユルヴェーダ(伝統医学)や発酵料理(医食同源)を融合させているのは世界的に見ても稀であると日比野はいう。 アーユルヴェーダに関しては、日本では特に“リラクゼーション”として認知されがちだが、実はインドやネパールでは西洋医学と同等に頼られる公的な医療。THE HUNDRED 8階のサロンでは、その医療資格を持つ専門家が常駐し、個別カウンセリングに基づく施術を行う。発酵料理に関しては、世界の食通も通う「徳山鮓」の徳山浩明が9階のレストラン「百薬」を監修をする。