篠田麻里子&小池徹平の不倫ドラマ“色っぽさゼロ”の衝撃ラストとは。最後の最後にニクい演出も
不倫ドラマだったはずの本作
いや、でもまだジャンル的には不倫ドラマではあるだろう。でもこれ以上、不倫を描かない。なら、これは何のドラマなの? 不倫ドラマを見ていた視聴者はもう迷子だ。 「いったい、何を見せられてたんだ~!?」と怒るのはまだ早い。不倫ドラマだったはずの本作は、ここからクライマックスに向けて怒涛の回収作業に入る。半分以上の話数を通して描かれた不倫要素を一枚一枚引き剥がすように。 まず、誘拐した心寧を監禁する部屋に爆弾をしかける。おびき寄せた渉がドアを開けた瞬間に爆発するギミック。財田の助言で、渉と綾香はひとまず共闘して救出へ。もはや不倫の色っぽさなんてどこにもない。
回想としてのもうひとつの不倫
綾香への指示は、マサトとの不貞行為中、常に着用していた鈴つきの首輪。監禁場所に到着するなり、綾香は首輪を装着し、渉と手分けして心寧を探す。ドアからドアへ。心寧がいる部屋を開けてしまっては……。 ここで番狂わせ。実は二重スパイだった裕が、爆弾が作動しないよう細工していた。親子3人、無事に再会し、綾香は首輪を投げ捨てる。こうして不倫の記憶はまたひとつ剥がれるのだが、渉は決着をつけるため、単身マサトと対峙する。思わぬ刺客。クズ呼ばわりされた千里にマサトは刺されてしまう。 傷を負った彼は渉の肩を借りながら、高校時代の恨みつらみを直接吐露する。マサトが渉を恨んだのは、自分にはない幸せを掴んだからだけではなかった。なんと、マサトの母親は渉の父親と不倫していたのだ。 そう、綾香とマサトによる現在の不倫だけではなく、マサトの回想としてのもうひとつの不倫が過去に隠されていたのだ。不倫が不倫を呼び、単なる連鎖を装ったかにみえた、周到な復讐心がすべて明るみとなる。
「幸せな結末」にすり替わったさりげなさ
致命傷を追ったマサトが息を引き取ると、不倫の毒気はすっかり解毒されたかのよう。再会はもうひとつ。第9話で裕が実は財田の息子であることが明かされたが、自分も不倫によって息子の親権を取られた財田と親子水入らずで昔のように抱きしめ合う。 では、心寧の親権を争う離婚裁判はどうなるのか。大切なことは娘の希望。そして過ちは決して許されないわけではないこと。何が最良か考えた渉は、綾香と和解し、再び3人で家族の暮らしをリスタートする。 不倫ドラマ史上、最恐の不倫劇はこうしてハッピーに幕となる。ほんとびっくりするくらいハッピー。今、考えると、渉の苦悩がにじむ場面でことあるごとに流れた挿入曲「最後の雨」が、第5話ラスト、大瀧詠一の名曲「幸せな結末」にすり替わったさりげなさがにくい。 <文/加賀谷健> 【加賀谷健】 音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu
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