ファーストリテイリング柳井氏を単独取材 “第2のヤナイ”は「望み小さい」【WBS】
日本企業の支援の課題とは?
柳井氏の指摘するような新興国の人材育成に力を入れているスタートアップがあります。東京・原宿のハラカドに店を構えるアパレルブランド「CLOUDY」。手編みで作られたバッグや独特な柄の小物などを製造・販売しています。 「アフリカに雇用を作るために始めたブランド。現地の人がデザインして作り、日本で販売している」(「CLOUDY」の銅治勇人CEO) 商品はアフリカ・ガーナの自社工場で現地の従業員700人ほどが作っています。タグを見ると「10%をアフリカの雇用に」という表示があります。 「売り上げの10%を必ずNPO法人で寄付をするような仕組み」(銅治勇人CEO) 売り上げが自社の手がけるNPOを通じ、アフリカでの学校などの建設運営につながる仕組みです。 CLOUDYはこれまで7校の学校を建設。親が子供を学校に行かせず働かせてしまうケースを防ぐため、給食を無償で提供するなど現地に合わせた支援をしています。今後は学校付近に農地や缶詰工場などを作り、雇用を生む計画です。 銅治CEOは日本企業の現地での教育支援に思うところがあります。 「途上国において、いろいろな団体が学校をつくっているが継続できている学校が少ない。彼らだけで運営していける学校づくりを途上国でつくっていくことが継続性につながる」(銅治CEO)
“市場を取りに行く”はダメ
こうした企業支援による海外の教育支援ですが、ファーストリテイリングの柳井氏は国境を越えて多様な人材を育成することが、日本企業の海外展開には不可欠だと強調していました。 豊島キャスター「成長市場であるアジアを日本企業が取りに行くとき、人材が重要になってくる」 柳井氏「その市場を取りに行くという考え方がよくないのでは。その国の人々のために仕事をしているんだと思わないと、そこの市場を取りに行くというのは取られる方としては嫌ですよね」 豊島キャスター「ファーストリテイリングもどんどん海外の市場を取ってきたのではないかという見方をしている人もいるのではないか」 柳井氏「いや、そうではなくて、われわれは成長する市場と一緒に成長することを手助けしてきた」 豊島キャスター「そのためにその地の幅広い人材も必要になる」 柳井氏「幅広い人材もだが、世界中で何かいいことをする企業じゃないと来てもらいたくない。ただ仕事に来たら『ノーサンキュー』となる。だから、あなたは今まで世界で何かいいことをしてますかと。この質問に答えられない限り、その国に出ても駄目だと思う」 取材陣から自らの後継者について聞かれた柳井氏は「世界全体のことを考えて、自分が何ができるかを考えながら仕事することが大事。洋服屋として発展できる人を期待する」と述べました。 今回のような取り組みを進める柳井氏の哲学を受け継ぐ後継者ははたして現れるのでしょうか。 ※ワールドビジネスサテライト