福岡城跡に「幻の天守閣」 春の舞鶴公園を七色に彩る/福岡市
潮見櫓は来春に完成予定
大濠公園の方へと足を延ばすと、高さ約10メートルの潮見櫓の復元工事が進んでいた。こちらは、“幻“ではなく、存在したことが確認されている。市によると、江戸時代に47以上あった櫓の一つで、博多湾の様子を監視していたという。 老朽化などで大半の櫓が解体される中、潮見櫓は明治時代に博多区の崇福寺に払い下げられ、仏殿として使われた。復元に際しては、崇福寺から古材を譲り受け、江戸時代の柱や梁(はり)、瓦などを再利用することに。そうした古材は建物全体の約4割を占めるという。腐食した部分は新しい木材で繕い、2025年春に完成する予定だ。
特別に許可を得て復元作業が進む現場に入ることができた。櫓の屋根の上では、2人の職人が竹の釘(くぎ)を使って、瓦の下ぶきに薄い杉の板を取り付けていた。石垣を守るために、土台には鉄骨やコンクリートを用いるが、竹製の釘をはじめ可能な限り建築当時と同じ素材を使い、工法も踏襲しているそうだ。
春の日差しの中、芝生が一面に広がる広場で子どもたちの歓声が聞こえた。腰を下ろして、石垣の上にそびえる天守閣を見る。周囲では3月下旬になると、ソメイヨシノやヤマザクラ、八重桜など19種類、約1000本の桜が咲き誇る。
一帯が鮮やかなピンク色に染められる公園で、七色に輝く「光の天守閣」。400年前、福岡城の築造に携わった人たちは、この情景をどう受け止めるのだろう。 戦乱の世を経て“美の国”の時代が到来したと思うのか、それとも「趣なし」と感じるのか――。束の間、空想の時間旅行をした気分になった。
読売新聞