スミロドンの赤ちゃんのミイラ発見、皮や毛が残り科学者も「驚き」
(CNN) ロシア極東シベリアで「スミロドン」と呼ばれる古生物の赤ちゃんのミイラが発見された。こうした発見は今回が初めてで、古生物学の世界に興奮が広がっている。ミイラの保存状態は極めて良好で、スミロドンがどのような生き物なのか初めて確認することができた。軟部組織を調べることで、スミロドンの筋肉が最も大きい箇所や、狩猟方法がどのように形成されたのかについて手がかりを得られそうだ。 【画像】生後約3週間のスミロドンと現代のライオンの子どもの比較 サイエンティフィック・リポーツ誌に掲載された報告書によれば、豊富な毛皮とミイラ化した肉が部分的に体を覆っており、顔や前肢、胴体はほぼ無傷だった。茶色の毛皮は短いが分厚く、毛の長さは20~30ミリ。ロシア科学アカデミーの会員であり、同アカデミーの古生物学研究所の所長を務めるアレクセイ・ロパーチン氏は、その毛皮も驚くほど柔らかかったと述べた。 ロパーチン氏はCNNの取材に対し、電子メールで、「はるか昔に絶滅した動物の生きた姿を自分の目で見るのは素晴らしい気分だ。スミロドンのような捕食生物については特にそうだ」と述べた。スミロドンは現在の大型のネコ科動物の遠い親戚であり、長さが最長20センチにも達する刃のような長い犬歯で知られている。 ロパーチン氏によれば、今回見つかったミイラはホモテリウム・ラティデンスがアジアにいた初めての証拠。ただし、化石化した骨については、これまでもオランダやカナダのユーコン準州で見つかっていた。そのほか、マンモスなどの氷河期の冷凍されたミイラは、シベリアのサハ共和国で確認されている。 ロパーチン氏によれば、それに比べて、ネコ科のミイラは「極めてまれ」だという。今回の発見の前に知られていたネコ科のミイラは2体だけで、いずれの赤ちゃんもホラアナライオンのもので、サハ共和国で見つかっていた。 ロパーチン氏は、今回の発見により、新たにホモテリウムの赤ちゃんがリストに加わったと指摘。この生物を理解するのに重要な次の段階は、DNAの抽出や、骨格や筋肉、毛皮の詳細な検査だと説明した。 古生物学者のジャック・ツェン氏はCNNの取材に対し、今回の発見から得られる「情報の宝庫」を考えると「言葉が出ない」と語った。ツェン氏は絶滅した哺乳類に関する解剖学を研究しているが、今回の発見には関与していない。 ツェン氏は「そもそも、この系統の骨が見つかることが珍しい。それに付随した軟部組織ならなおさらだ」と述べ、発見されたミイラを目にしたことで現実が変わったようだと言い添えた。 スミロドンのミイラはサハ共和国北東部を流れるバジャリカ川近くの永久凍土に保存されていた。2020年に同共和国の古生物学者の監督の下で発掘業者がマンモスの牙を探していたところ発見された。ロパーチン氏が明らかにした。 放射性炭素年代測定法で調べたところ、スミロドンのミイラは少なくとも3万5000年前のもので、後期更新世に生息していたことがわかった。 報告書によれば、特に前肢の保存状態は素晴らしかった。前肢には爪と楕円(だえん)形の肉球も残されていた。 ミイラの一部とともに、骨盤と後肢の骨も氷の中で発見された。ライオンの子どもの解剖学的特徴との比較や、切歯の成長具合から、スミロドンの子どもは生後約3週間で死亡したと推定される。 ロパーチン氏は、今回のミイラによって、スミロドンの子どもが同じような年齢の現代のライオンの子どもと全く異なっていることが示されたと指摘した。毛皮の色はより濃く、耳はライオンの子どもよりも小さい。前肢はより長く、口が大きく開き、首もより太い。上唇の高さは現代のライオンの子どもの2倍以上で、上あごの長い犬歯が成長したときに、唇で覆うことができるようになっていた可能性があるという。 ツェン氏によれば、前肢はライオンの子どもよりも円形で、むしろクマの前肢に近い。クマはその力強い前腕で木々や草を掘り進んで餌を探すことで知られている。スミロドンの前肢の大きさと形から、成体も獲物の動きを封じるために前腕に頼っていた可能性があるという。 これまで科学者は化石をスキャンして筋肉をデジタルで立体的にモデリングすることで、スミロドンの解剖学的構造についての仮説を立ててきた。ツェン氏は、そうしたモデリングと、四肢の一つを「生身」の状態で見ることは比較にならないと語った。「これにより、こうしたスミロドンが前肢を使っていた可能性が高まったと思う」