関東大震災100年、教訓生かすことが後の世代への責任だ 耐震化に代替拠点配置…「普段からの備えも大切」と谷防災相
―南海トラフ巨大地震の被害想定見直し作業が進んでいます。避難生活に伴う持病悪化などによる「災害関連死」を新たに盛り込む方向ですね。 「災害関連死という考え方は阪神大震災で生まれ、災害弔慰金を支給する仕組みができました。死者約6400人のうち、関連死が約900人。しかし、2016年の熊本地震では関連死が直接死の約4倍も多かった。関連死は避けて通れないという問題意識を持っています。専門家に議論をしてもらい、検討を取りまとめてもらいます」 ―災害が激甚化する中、「防災省」など省庁横断の防災組織創設を求める声も根強くあります。 「司令塔的な組織を求める声があることは承知しています。一元化すればものすごく効率的に対応できるのではないかという人がいますが、そこは誤解があると思います。例えば、国土交通省が担う国全体の道路や河川、砂防行政との整合性をどう取るのか。考えることは多岐にわたり、簡単ではありません。しかし、今の組織が絶対ではないので、常に柔軟に、今後のあり方を見直していく必要があると思っています」
―阪神大震災では、兵庫県の職員として復旧・復興に携わりました。 「阪神大震災は突然で、備えがありませんでした。普段からの備えなしに、いざというときには対応できません。国だけでなく、自治体も普段からの備えや訓練の大切さを思い知らされた大災害でした」 ―自治体や国民はどう備えるべきでしょうか。 「災害への備えは、自治体によって温度差があります。気候変動の影響もあり、地震、風水害といった災害は全国どこにいても起こり得ます。過去のさまざまな大災害の教訓を生かすことが、後の世代のための責任だという気持ちで対応しなければなりません。国民の皆さんは、関東大震災100年を契機に、いざというときの避難場所や避難経路をもう一度確認していただきたいと思います」 × × たに・こういち 明治大卒。兵庫県に入庁後、防災局長などを歴任し、2003年に初当選。復興副大臣、党政調会長代理などを経て22年8月から現職。71歳。兵庫県出身。