関東圏で館山の郷土料理「ごんじゅう」販売へ(千葉県)
館山市で古くから伝わる郷土料理「ごんじゅう」が、量販店向けのおにぎりを手掛ける「ミツハシライス」(横浜市)により商品化される。監修は、ごんじゅうを学校などで伝える活動をしていた長谷川美知枝さん(77)=館山市高井=で、6月から安房地域を含めた関東一円のスーパーで販売される。 ごんじゅうは、鶴谷八幡宮例大祭「やわたんまち」で、神輿の担ぎ手が手軽にエネルギーを補給できる料理として振る舞われるおにぎり。 豚バラ肉、油揚げ、かつお節を炒め、砂糖、しょうゆ、みりん、酒などで味付けし、米飯と混ぜて握ったもので、安房から出雲へ氏子総代がお参りに出掛ける際に渡されていたという話も伝わる。長谷川さん宅をはじめとする多くの家がやわんたんまちの接待で準備し、振る舞っていたが、現在では接待の縮小から、ごんじゅうをつくる家庭も少なくなっているという。 同社では、全国各地の伝統ある郷土料理が薄れつつある現状に着目し、コメを使った郷土料理を商品化する事業をスタート。その第一弾としてごんじゅうに光が当たった。 商品の開発を担当する小谷田篤さん(41)と田村芙紗菜さん(29)らが中心となって昨年8月ごろから開発に着手。「地元の人に味をみてもらいたい」と、長谷川さんが試食を繰り返し、ごんじゅうの味を知る家族や近所の人らも加わって“本物”の味に近づけた。 長谷川さんは「分量や素材が同じでも、つくるのが機械と手では味が全く違う」と、機械で均一に、ごんじゅうの味を再現する難しさなどに直面しながらも、「私のごんじゅうがヒントになれば」と試食を重ねた。20回以上の試作を経て、かつお節の風味が広がるごんじゅうが出来上がった。
パッケージには長谷川さんの似顔絵と、田村さんの発案で、館山唐桟織の粋な縦模様もデザインし、館山らしさを表現したという。 小谷田さんは「今はごんじゅうを食べる機会や、つくる人が少なくなってきていると聞いている。商品化を機に、館山の食に興味を持ったり、つくってみたいという人が増えたり、ごんじゅうの認知がもう一度広まれば」と思いを込める。 長谷川さんは「(ごんじゅうを)知っている人も知らない人も、手に取って館山を思い浮かべてくれる人がいたらうれしい。温めて食べるのがおすすめ」と笑顔を見せた。