20年以上も放置されてきた、UNRWAのテロ支援...背後のハマスとの関係にメスを入れるとき
<UNRWAとハマスの関係に関する証拠は長年あった。しかし、これを無視して資金提供を続けてきた国際社会。今こそ改革のための圧力を>
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は1月26日、複数の職員の解雇を発表した。10月7日のハマスによるテロ攻撃(10.7)に職員が関与していたというイスラエルからの情報を受けての対応だという。 【動画】UNRWAへの支援停止に関する海外報道 米ニューヨーク・タイムズ紙はこれについて、疑いが持たれている12人のうち7人はUNRWAが運営する学校の教師で、5人は学校職員やソーシャルワーカーであり、襲撃への参加や、女性の拉致、遺体運搬や弾薬配布などに関与したとされると報じた。 これを受け、アメリカは実態解明と対応を求めUNRWAへの拠出金を一時停止すると発表。カナダやイギリス、ドイツ、イタリア、スイス、オーストラリアなどがこれに倣い、日本はG7諸国の中ではフランスと共に最後に拠出金停止を決定した。 惜しむらくは、ハマスがイスラエルに対する前代未聞の大規模テロ攻撃を実行してから、ようやく国際社会が一致団結した行動に出たことだ。 UNRWAのテロ支援には20年以上の歴史がある。 2001年にはUNRWAの運営する学校でハマス指導者が集会を開き、その後UNRWA職員がテロリストを賛美したと米下院議員が報告。02年にはUNRWA施設がハマスの武器庫となったり、テロリスト養成のサマーキャンプに関与したりしている問題を別の下院議員が報告した。 03年にはUNRWA職員がイスラエルの公共バスに火炎瓶を投げ付けるテロ事件が発生。04年にはガザ地区でイスラエル兵を殺害したテロリストがUNと明記された国連の救急車に乗って逃走する映像をロイター通信のカメラマンが撮影した。 08年にはUNRWA運営の学校の校長がテロ組織「イスラム聖戦」のためにロケット弾を製造していた事実が判明。14年にはUNRWAの診療所で爆発テロが発生し、15年にはUNRWA職員がフェイスブックで反ユダヤ主義を扇動していたと発覚した。17年にはUNRWA幹部職員がハマスのガザ地区幹部に選出され、20年にはUNRWA学校で手榴弾と自爆ベストが発見された。 21年にはUNRWA職員100人以上がソーシャルメディア上で暴力や反ユダヤ主義を支持したという報告書が出され、UNRWAが運営する学校で使用されている教科書が暴力、差別、反ユダヤ主義、テロを扇動していることをUNRWA事務局長が認めた。 10.7以降も多数のUNRWA職員がソーシャルメディア上でハマスのテロに喝采を送ったという報告書や、UNRWA学校の卒業生がテロを実行していた証拠、UNRWA教師が拉致されたイスラエル人を監禁していたという証言、ハマスがUNRWA物流拠点を支配している証拠、UNRWA学校が武器庫や攻撃拠点になっていた証拠などが次々と出された。 20年以上前から証拠はあった。しかし国際社会はこれを無視し、UNRWAへの資金提供を続けてきた。日本の外務省に至っては10.7以降も複数回にわたりUNRWAへの追加支援を発表し、11月10日には主要支援国としてこれからもUNRWAを支え続けると宣言した。 パレスチナには人道支援を必要とする人々がいる。しかしガザは、その人道支援をかすめ取りテロに転用するハマスに支配されてきた。 もっと早くUNRWAに圧力をかけていれば10.7は起こらなかったかもしれないと嘆いても意味はない。しかし今、国際社会が動き、UNRWAに改革の圧力をかけることは未来につながる。
飯山 陽(イスラム思想研究者、麗澤大学客員教授)