キャンパスの道路脇で見つけたキノコから新発見 分析したら、老化の原因取り除く新たな抗酸化物質を検出
信州大バイオメディカル研究所のチーム、国際科学誌に成果は発表
信州大バイオメディカル研究所(長野県松本市)所属で農学部(南箕輪村)で研究する河村篤助教(36)=天然物化学=らのチームが、同学部構内の道路脇で採集したキノコから新しい抗酸化物質を発見した。物質を地名にちなみ「InaosideA(イナオシドエー)」と名付け、成果を2月、国際科学誌「ヘリヨン」で発表。抗酸化物質は細胞の老化などの原因となる活性酸素を除去する働きがあり、医薬品や農薬への応用が期待される。 【写真】新たな抗酸化物質を発見したチームの河村助教
キノコは食用にもなる「マスタケ」
新発見の物質は、枯れ木に付着し食用にもなるキノコ「マスタケ」から取り出された。構内を歩いていた河村助教が道路脇の切り株に生えていたキノコを発見。このキノコを持ち帰り、同学部で菌類を研究する山田明義教授に依頼してマスタケと同定した上で、研究資料に加えた。 マスタケの抽出物に抗酸化作用があると指摘した先行研究はあるが、詳細な成分は分かっていなかった。河村助教が新物質の構造を解析すると、「フラノシド(furanoside)」と呼ばれる構造を持つと判明。伊那(ina)と組み合わせて命名した。
見つかった農学部のキャンパスは化合物の「宝箱」
河村助教は自然界の生物から化合物を見つけ、人工的に合成してその機能を分析する天然物化学が専門。化合物を探す対象はアメフラシなど海洋生物から薬草までさまざまだ。農学部キャンパスは、特色ある化合物の「宝箱」とも呼ばれるキノコが豊富な環境で、同分野の研究者からうらやましがられるという。 今回の発見について河村助教は「身近な所にキノコが豊富にある農学部でしかできない成果。新物質にはキャンパスの名前を付けたかった」と話す。現在は別種のキノコも分析しており、「まだまだ新発見の物質が見つかるのではないか」と期待している。