【思考力チェック!】A,Bという2つの空港を飛行機で往復する。飛行機でAを出発したとき、A,B間が「無風」のときとくらべて、「AからBへつねに風が吹いている」場合、飛行機の往復時間はどうなる?
「A,Bという2つの空港を飛行機で往復したとき、無風の場合と、AからBへつねに風が吹いている場合、飛行機の往復時間はどう変わる?」 これは知識や難しい計算はいっさい不要で、「考える力」のみが問われる「論理的思考問題」のひとつ。論理的思考問題はGoogle、Apple、Microsoftといった超一流企業の採用試験でも出題され、「スティーブ・ジョブズ超えの天才」と言われたあのピーター・ティールも自社の採用試験に取り入れた。これまでの正解が通用しない時代に必要な「思考力」を鍛える、「最高の知的トレーニング」でもある。 そんな論理的思考問題の傑作を世界中から収集し、解説した書籍が『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』だ。「論理的思考」「批判思考」「水平思考」「俯瞰思考」「多面的思考」が身につく67の問題を紹介。「頭のいい人の思考回路」がわかり、読むだけで、一生モノの武器となる「地頭力」が鍛えられると話題。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、「思い込みを捨てて考えられる人」だけが解ける問題を紹介する。 【この記事の画像を見る】 ● 都合のいい思い込みを捨てられるか? 直感を疑うことは簡単ではありません。 そこでもう1問、問題を考えてみましょう。 いっけん、考えるまでもなさそうな問題ですが……。 「逆風の飛行機」 A,Bという2つの空港がある。 いまあなたは、飛行機でAを出発してA,B間を往復する。 A,B間が「無風」のときとくらべて、「AからBへ、つねに風が吹いている」とき、飛行機の往復時間はどうなるだろうか? 以下から選んでほしい。 『変わらない』 『無風のときより長くなる』 『無風のときより短くなる』 なお、飛行機のエンジン回転数や風速は一定とする。 イラスト:ハザマチヒロ 次のページで、正解と考え方をお伝えします。
<正解> 無風のときより長くなる 「最も正解ではなさそう」と感じる選択肢が正解でした。 シンプルで古典的な問題ですが、正解に辿り着ける人はごくわずか。 批判的な思考で考えてみましょう。 ● 直感を裏切る正解 あらためて確認しましょう。 答えは…… 無風のときよりも、風が吹いているときの方が飛行機の往復時間は長くなります。 直感に反する解答なので驚いた方も多いでしょう。 ふつうに考えたら「無風」のときと「風が吹いている」ときとで、所要時間は変わらないはずです。 AからBに向かって風が吹いているとき、飛行機は「行き」では追い風で早く到着し、「帰り」では向かい風により遅くなる――。 「行き」で早く着くから、「帰り」で遅れた分は相殺されるはずなのに。 いったい、何が起こっているのでしょう? ● 逆風の脅威 ポイントとなるのは「逆風」です。 結論から言うと、「行きは早く着いて、帰りはその分だけ遅くなる」という直感が落とし穴です。 簡単な例で考えてみましょう。 空港A,B間の距離:600km 無風のときの飛行機の速度:時速200km であるとします。 このとき、飛行機の往復時間は、 行き:3時間 帰り:3時間 となり、合計6時間です。 とくに難しい計算ではありませんね。 では、「AからBに向かって風速(時速)100kmの風が吹いている」場合の往復時間を求めてみましょう。 行きは追い風なので、 時速200km + 風速100km=飛行機の速度は時速300km⇒所要時間は2時間 (実際は風速がそのまま速さに加算されるわけではありませんが、計算しやすいように単純化しています) そして帰りは向かい風なので、 時速200km - 風速100km=飛行機の速度は時速100km⇒所要時間は6時間 つまり飛行機の往復時間は 行き:2時間 帰り:6時間 となり、合計8時間。 なんということでしょう。 風が吹いているときの方が、往復時間は2時間も長くなっています。 ● 無限の逆風 なぜこのようなことが起こるのか? それは、追い風による加速と、向かい風による減速は性質が異なるからです。 極端な例で考えてみましょう。 風速が「飛行機の速度」とまったく同じである場合を想定してください。 空港A,B間の距離:600km 無風のときの飛行機の速度:時速200km AからBに向かって吹く風の速度:風速(時速)200km この場合、前に進もうとする飛行機本来の時速と、それを押し戻そうとする風速が釣り合っています。つまり理論上…… BからAに帰ろうとする飛行機は1ミリも前に進めません。 飛行機は永久にBからAに戻れないので「A,B間の往復時間」は無限になってしまうのです。 だから、風はない方がいいのです。 ● 「思考」のまとめ 「抵抗がある方が、結果的には遅くなる」。 これは同じような条件下であれば、どんな状況でも成り立ちます。 「ふつうに歩いて100メートル往復 VS 動く歩道上での100メートル往復」「ふつうのプールで10メートル往復 VS 流れるプールで10メートル往復」。 いずれも後者の方が往復時間は長くなります。 計算すればわかることですが、「行きで速くなったのと同じ分、帰りは遅くなるはず」と、都合よくつじつまを合わせようとして考えてしまいがちなのです。 ・「なんとなく、こうかな?」というときほど、しっかり検証してみる ・極端な場合を考えると「例外」に気づける (本稿は、『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』から一部抜粋した内容です。) 野村裕之(のむら・ひろゆき) 都内上場企業のWebマーケター。論理的思考問題を紹介する国内有数のブログ「明日は未来だ!」運営者 ブログの最高月間PVは70万超。解説のわかりやすさに定評があり、多くの企業、教育機関、テレビ局などから「ブログの内容を使わせてほしい」と連絡を受ける。29歳までフリーター生活をしていたが、同ブログがきっかけとなり広告代理店に入社。論理的思考問題で培った思考力を駆使してWebマーケティングを展開し、1日のWeb広告収入として当時は前例のなかった粗利1500万円を達成するなど活躍。3年間で個人利益1億円を上げた後、フリーランスとなり、企業のデジタル集客、市場分析、ターゲット設定、広告の制作や運用、セミナー主催など、マーケティング全般を支援する。2023年に現在の会社に入社。Webマーケティングに加えて新規事業開発にも携わりながら、成果を出している。本書が初の著書となる。
野村裕之
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