松山英樹のショートゲームが強い理由。アイアンショットに見る、世界レベルの「フェースを開いて閉じる」動き【ゴルフメカニクス研究所 #10】
ウィークグリップによる「開いて閉じる」
そして松山選手のグリップが、昨今の選手の中ではかなりウィークであることにも着目しています。これによってトップではしっかりとフェースが開き、またインパクトまでに閉じてくる動作が入ることで、安定したボールストライキングを行っているとしています。 クラブを振り下ろす動作に同調して、前腕も回旋を行うことでヘッドスピードを安定して確保するとともに、しっかりとフェースをスクエアにしてボールを捉えていると評しています。 ここまでがイメルマン氏の松山評です。
フェースの開閉は「可動域」と考える
ここからは私、大庭個人の意見になりますが、昨今はドライバーの大型化などの影響もあり、「開いて閉じる」よりは、「ずっと開かずに」、いわゆるフェースを「シャットに」「開きを抑えた」手法が流行っていると言えますし、それに伴ってグリップもストロンググリップが多くなってきていると言えます。
ストロンググリップというのは両腕がフェースを開いた状態にしてから、クラブだけをフェースが目標に向くように握り直した状態です。 つまり手や前腕はフェースを開いた時と同じ状態になっているので、スウィング中にフェースが開く要素が排除できるというのが利点です。「フックグリップ」とも言われますが、一般的にはフェース開閉を抑えてフェードボールを打つのに適した手法です。 しかし、レッスンの現場、とりわけ初心者の方には私はこのグリップをお勧めしていません。理由は、「ドローが覚えられない」ことと、「ショートゲームが難しくなる」からです。 プロでもフェードヒッターは、ほぼ「かつてドローヒッターだった」選手が曲がり幅を抑えるために転向したケースがほとんどです。アマチュアでも、まずはクラブの構造通りに「開いて閉じる」ことで、距離の稼げるドローボールを打つことを覚えたいものです。 そして松山選手といえば、アイアンに加えてアプローチショットの技術も世界屈指といえますが、これもフェースの開閉を自在に操れるウィークグリップであることが大きな要素になっていると思います。今回のジェネシス招待でも、閉じた状態での転がし、しっかりと開いたロブなど、多彩な技術で寄せて(入れて)いましたが、ストロンググリップでそうした繊細さを習得するのはかなり困難だと思います。 しばしばフェースを閉じすぎると「左にフックする」「曲がる」と思っておられる方がいます(そういう方に限ってスライサーだったりします)が、「開いて閉じる」を操れるのであれば「開かず閉じず」も操れるようになります。 つまりフェースの開閉はあくまで「可動域」と考え、状況に応じてその量を変化させられるのが王道であり、ゴルフの楽しさや将来性を広げていくカギになると思います。
大庭可南太